第13話 思い出と一緒に[前編]



 ああ、懐かしい。ここは車の中だ。いつかの夏の終わりの方の旅行話。私の前世の思い出。そして唯一の楽しい思い出。ラジオで甲子園の様子が流れている。確かいつかの年の決勝戦。お父さんもお母さんも笑ってる。「今年こそは東北に優勝してほしいな。」「そうですね。あなたの故郷ですもんね。」そんなことを話してる。ここまでは平和だったんだ、幸せだったんだ。思い出というのは残酷だ。今ではない過去の話になってしまうからだ。もう二度と訪れることのない過去に。




 カーテンのなびく音で目が覚めました。だいぶ暖かくなりましたね。昨日風が心地よくて窓を開けたまま寝てしまいました。それにしても懐かしい夢ですね。まだ私が敬語で話していない時ですね。前世の夢なんてもう数年間もみていないというのになんで今になってみるんでしょうか。今回は過去に関係しているのでしょうか。あまりうれしくないですね。この世界で会えてうれしいと思える人物は数人しかいませんから。






 ふと窓を見ると真っ白いフクロウが首のところを器用に足で首をかいています。


私と葬儀屋連盟を繋ぐペットのうるらちゃんです。仕事の依頼書を持って来てくれます。足に二枚の封筒が結ばれています。一枚は初めて見る字、二枚目見たことのある字でした。さっそくお仕事ですか今回は何でしょう。私は宿を出てジープに乗り走りでします。








 さーて今回の豆知識のコーナーは葬儀屋についてですね。


1、葬儀屋の資格試験を受けます。国家試験みたいなものですね。






2、受かったあとは家族と家族の弟子以外の葬儀屋に弟子入りして技術や接客の仕方を教え込まれます。






3、弟子入りした葬儀屋に認められれば葬儀屋連盟の適性検査を受けます。






4、受かれば葬儀屋として認められます。




 いかがでしょうか。でもまだまだスタートラインに立ったばかりですよ。


なぜなら葬儀屋には階級があります。


一番上から紫、青、赤、黄、白、黒の順です。冠位十二階じゃん!


 葬儀屋の証はペンダントなので私の色覚えてます?紫ですよ。紫!一番上です。葬儀のこなした数や的確さで決まります。なので適当な仕事はできないんですよ。






 さてそんなことを話していたら国についてしました。午前11時でした。今回の国は商業国家デオンです。名前の通り数々の商人たちが集まる国で商会や工場なども多くあります。住んでいるのは富裕層の方々が多いそうですよ。






 ちなみに今回の依頼は商会長からの依頼で奥様のを行って欲しいということです。今回は大規模な葬儀なので私がメインで助っ人が来てくださるそうで2人で葬儀を行います。一人で手に負えないような依頼は協力することも多々あるんですよ。








 しっかし大きな門ですね。鉄製の銀色の門でした。しかも何重にもなっています。それ程大事な取引を行っているのでしょう。だからでしょうか?入国審査に時間がかかっているので渋滞しています。私の番が回ってくるまで25分かかりました。ペンダントと依頼書を見せて簡単入ります。








 国に入ってみると整備された大きな道路に出ました。しかしそこには建物らしきものはなく茶色と緑の景色が広がります。畑みたいですね。








 しばらくジープを走らせていると再び大きな門が、、、。まさかね。






「車を止めろー、入国審査だ。」


またですか、、、。どんだけ厳しいの!私はペンダントと依頼書をを見せます。






「葬儀屋か。入っていいぞ。」


高圧的ですね。門番ってそんな職業でしたっけ?








 ようやく建物が見えてきました。しかし高い建物はなく一階建ての物ばかりです。どうしてなんでしょうか?取り敢えず依頼主様の所に行くとしましょう。






「大きすぎません?」


そこには先の見えない公園と間違えるほどの庭?森?がありました。あれ家は?







 取り敢えず入ってみましたが樹木に囲まれたで何もない整備された道を走っていました。しばらくするとテントが見えてきました。まさかあれが家?



 ジープから降りると一人の女性と目が合いました。メイド服を着ていらっしゃいました。


小豆色の髪をした30歳程の方でした。


「ようこそいらっしゃいました。私はこの屋敷のメイドでございます。」



「こちらこそご依頼ありがとうございます。ラディアと申します。よろしくお願いします。」


 挨拶をしているとテントの中から男性が出てきました。こちらは黒髪の天然パーマをした50過ぎのおじさまでした。






「よう、葬儀屋さん。俺の名前はガバナーよろしくな。」






「よろしくお願いいたします。変わった所に住んでるんですね。」






「まあな。妻はこれが嫌で出ていったんだけどな。ぎゃはははははあ」


何が面白いのでしょうか?困ったのでメイドさんに助け舟を出したのですが。






「ご主人様はアウトドア派の人間なのです。」


そうじゃないんですよ。






「へえー。ん?奥様の葬儀の依頼じゃないんですか?」






「そうだよ。あいつ5年前にここを出ていったあと何の音沙汰もなかったのに帰ってきたと思ったら死体だったんだよ。笑っちまうよな。」


そしてまた甲高い声で笑います。笑いのセンスが私とはかけ離れた人なんですね。


テントからビンを取り出して一気に飲みます。






「ご主人様お酒はお控えください。お医者様からもそういわれてるでしょう。」






「うるせえ!誰がなんて言おうが俺の自由だ!」


再びビンを90度にします。






「酔ってるんですか?それとも、、、。」






「奥様のことをずっと思われてて出ていった一週間後から5日前までずっと探していらっしゃいました。少しおかしくなってしまったのかもしれません。」






「だいぶな気がしますが、、、。」


だってビンの中にはお酒どころかなにも入っていないのですから。






 奥の方には大きな屋敷がありました。なんだちゃんと家あるじゃないですか。






「どうぞお入りください。」


メイドさんに案内され家の部屋に入りました。そこでガバナーさんの過去を語られました。


それは私が知っている話でした。






 この国では商業の中心らしいので様々な人たちが訪れます。それが故商会長のガバナーさんは物凄く忙しく奥様であるフリージアさんとは一週間会えないこともあったそうです。






 それに申し訳なかったのかガバナーさんは自宅を大きく改築しました。フリージアさんは自然が大好きな女性でした。そうでせめて大好きな自然の中にいて欲しいと思ったのでしょう。






 しかしこれは逆効果でフリージアさんはこれに激怒しました。自分よりも仕事を優先するんだと呆れてしまいガバナーさんと口論になってしまいました。そしてこの家を出て行ってしまいました。






 当時のガバナーさんはすぐに帰って来るだろうと思い仕事に取り掛かりました。今回の仕事も忙しく一週間家を開けてしまいました。そこで雇われたのがサウダーさんだそうです。家に戻ってきたガバナーさんは驚きます。まだフリージアさんは帰ってきてなかったのですから。ガバナーさんは急いで捜索願を出しましたが見つかることはありませんでした。






 そして5日前フリージアさんはガバナーさんの願い通り帰ってきました。遺体となって。それに悲しんだガバナーさんはお酒に浸るようになりました。


・・・。どこかで見たことのある風景ですね。確か前世で。








「ご主人様をお救いください。このままではアルコール依存症で亡くなってしまいます。ご主人様はそうなった方がいいと仰ってますが奥様の最後の置手紙には私に向けて健康でいて欲しい無理をさせないでと書かれておりました。」








「なるほど。これは少しだけ時間がかかりそうですね。」






「葬儀の日程や手配などはもう一人がいらしてからご説明いたします。今日のところはゆっくりお休みになってください。」






「ありがとうございます。」


私はジープから荷物を取り出してもう一度部屋に向かいます。






「ジープさん。共同の葬儀なんて初めてで少しだけ緊張しています。どうすればいいでしょうか?」


いつも通り返事が返ってきません。ぐすん。泣いてませんよ!いつぞやと同じように笑い声が聞こえます気のせいでしょう。








 部屋でお昼を食べました。メイドさんが作ったサンドイッチでした。美味ですね。それからベットでお昼寝をしました。早朝からずっと運転していたのでかなり疲れました。いつもの事ですが。








 車のエンジン音で目が覚めました。恐らく別の葬儀屋さんが来たのでしょう。私は着替えて玄関に向かいます。不安と高揚の2つの気持ちを抱えながら。






 玄関につくと私はこれ以上になく目を開けたことでしょう。それほどに驚きました。


そこには18歳の萌黄色の私とは同じ髪型をした竜胆色の目をした女性が立っていました。


腰には2本のレイピアを首からは私と似たような形の紫色のペンダントをしておりました。前髪にはオーロラ色の髪飾りをしていました。


その姿を見て私はこういうのでした。


「エテルナ先生!」と。




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