第49話 シャラの愛娘は残虐王に襲われました
大魔導師のディーンは作戦計画通り、近衛兵によって閉鎖された王宮の広場に転移した。
「ディーン。成功したか」
女連れで転移してきたディーンを宰相のジンデルは迎えた。
「何とか」
ディーンはホッとした。
ディーンは他人の魔力をある程度測れるが、あのシャラの地は本当に恐怖を感じるところだった。3日前から周りの森に潜伏して中を見ていたが、200人くらいしかいない人の中には巨大な魔力量を纏ったものがたくさんいたのだ。
特にシャラと呼ばれた者は魔力の大きさが判らないほどの巨大な魔力を持っていた。気配を消して遠くから見た瞬間にディーンは格の違いを感じて恐怖した。あ奴だけは絶対に勝てない。と見た瞬間に判ったのだ。
確かに大賢者と呼ばれたジャルカは、力は感じなかったが。奴の場合は魔力を隠している可能性もあった。
村の周りには結界が張られており、罠が各地に張られていて、ディーンと言えども知られずに中に入るのは不可能だった。
ノザレの襲撃者がその一部に引っかかってくれたおかげで中に何とか入れたのだ。
シャラが大半の兵士を連れ出してくれたおかげで後は簡単にクローディアの前までは行けたが、このクローディアにしても魔力量は軽くディーンを上回っていたのだ。
ディーンはとっさに傍の騎士の命を盾にクローディアを魔力を阻害する魔道具で拘束して、ここまで連れてきた。しかし、遠くから見たこのクローディアの雷撃は、ディーンからしても恐怖を感じるレベルだった。
「ノザレはやはりだめじゃったか」
宰相はあまり残念そうにはしていなかった。
「ノザレの10名もの魔道士はこの女の雷撃で瞬殺された」
「ほう、この女はそれだけの手練れか」
ジンデルは改めて女を見た。
クローディアは顔を背ける。
見た目は到底そんな強面の女魔導士には見えなかった。
金髪に青い目の整った顔をしたこの女クローディアはいかにも国王キャメロンの好みそうだった。
「陛下がお待ちだ」
ジンデルが言う。
「この女を陛下に会わせるのか」
ディーンはジンデルに近づくと小声で聞いた。
「何じゃ。ディーンらしくない。この女を陛下に合わせたくないとはこの女に恋でもしたのか」
興味深そうにジンデルがディーンを見た。今まで女など全く見向きもしなかったディーンが気にするなどどうしたものか。
「何を言う。陛下のお命の問題だ」
ディーンが言う。この女はそれだけ危険だった。いざとなったら拘束魔道具の力など一瞬でぶち破ってしまいそうだった。
「それだけ危険なのか」
「ああ、それとシャラとかいうものはもっと危険だ。皇太子殿下が瞬殺された意味もよく判った」
二人は小声で話した。
「それではなんとしてもこの女を盾にして陛下に交渉してもらうしかあるまい」
ジンデルは冷静に言った。
「しかし、陛下のお命の危険性が」
「そのためにその方がおるのであろうが。シャラを屈服させられなければ我らに勝ち目はない」
「それはそうだが」
ディーンは宰相が理解できないのがもどかしかった。あのシャラを怒らせたら、下手したらこの王都が一瞬で殲滅させられる。そうディーンが危惧するくらいシャラの魔力量は強大だった。
一方、ジンデルはディーンが誇張してると感じていた。この女を見てもどうしてもそんなに強い魔導師には見えなかった。ディーンは慎重にすぎると。
結局、ディーンはジンデルを納得させられず、騎士らに先導されてクローディアは国王の私室に連れて行かれた。
国王は私室でソファに座って待っていた。
「ほう、その方がクローディアか。中々美しい容姿をしておるな」
にやけた笑いをしてキャメロンはクローディアを見た。
「おい、陛下の前だ。跪け」
ディーンは女を跪かせようとした。
「何するのよ。誘拐犯などの前で跪くわけ無いでしょう」
クローディアは抵抗するが、力が違いすぎてあっという間に跪かされる。
「中々骨のある女よな」
国王はそう言うとクローディアの顎に手をやって顔を上向けた。
「あなたこのようなことをして恥ずかしくないの」
きっとしてクローディアはキャメロンを見た。
「ふんっ、気の強い女よな。オードリーのようじゃな」
いやらしい目つきでキャメロンはクローディアの躰を見た。
「オードリーさんってアルヴィンさんの奥さんだった」
「ほう、アルヴィンを知っておるのか」
国王はクローディアの顔を改めてみた。
「どうやら噂は本当のようでした。どのようにしたか判りませんが、アルヴィン殿下を確かにこの目で見ました」
ディーンが報告する。
「ほう、黄泉の国から蘇ったというのは本当なのか」
興味深そうにキャメロンは言った。
「やはり、夫のアヤツの前で妻のオードリーを抱いたのを恨んで蘇ったか」
下卑た笑いをしてキャメロンは言った。
「やっぱり、お前は最低のクズね」
それを見てクローディアは避難した。
「ほう、そのクズに今から抱かれる貴様が言うか」
キャメロンのクローディアを見ている目は笑っていなかった。
「止めて」
慌ててクローディアは避けようとしたが、後ろ手に縛られてディーンに後ろから抑えられていては逃げようが無かった。
「嫌ああああ」
クローディアの悲鳴が部屋の中に響いた。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
絶対絶命のピンチにたつクローディア。
次話は本日夜に更新予定です。
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