終わりの日

「-----!」


 なんだ? 何か聞こえる……目が……どの位寝てた? 時計は……12時手前だ。予定通り1時間寝ていたのか。だが一体何が……。


「あの培養槽に入っている、人間のような生物は何だと聞いているのだ博士!」


「かーっぺ! 普通人の部屋に勝手に入って怒鳴り散らすか? なあ毒舌メイド」


「博士に普通とか言われると私のプログラムはエラー起こすんですよ」


「ひどくね?」


 ……人間だ! 知らない人間が10人位銃を持って、俺が入っている培養槽の下にいる博士とグレースを取り囲んでいる!


「冗談に付き合うつもりはない! 博士を拘束しろ!」


「はっ!」


「毒舌メイドよろ」


「はいはい。"換装"」


「な、なに!?」


 博士に何をするつもりだ! って、そっか。グレースがいた。

 相変わらずカッコいいい魔道鎧の姿に換装したグレースが、見知らぬ人間達の前に立ちはだかる。どう考えても単なる人間じゃ今のグレースに勝てないだろう。現に、人間達は完全に腰が引けてしまっていた。


 いや、俺も見ているだけじゃいけない。培養槽の硝子を、ぶち破る!


「ぬわっびっくりした!」


「大丈夫か博士!」


「今割れたガラスの音で、心臓が大丈夫じゃなくなってたわ!」


 培養槽を拳で叩き割り博士の隣に着地したが、特に外傷も無い様で普段通りの博士だ。


「超生物が出て来た! 撃て! 撃て!」


 一番前にいた白衣の年老いた研究員が叫んでいたが、なんだこいつ、俺の事知ってるのか?


「お引き取りを。停止力場て!?」


「ぬを!?」


「な!?」


 地面が急に!?


 ◆


 ◆


 ◆


 名無しのプレッパーズさん

 このスレは人類滅亡に備える集団。通称プレッパーズのスレです。人類が滅ぶわけないだろアホって考えるアホは回れ右でお願いします。


 名無しのプレッパーズさん

 遂に我々プレッパーズの時代なんやなって。


 名無しのプレッパーズさん

 遂にって何回言った?


 名無しのプレッパーズさん

 さあ?


 名無しのプレッパーズさん

 正直に言うともう覚えてない


 名無しのプレッパーズさん

 ダメじゃん


 名無しのプレッパーズさん

 うん百回目ぶり


 名無しのプレッパーズさん

 超破壊爆弾が完成したってニュースが流れた時は最高の盛り上がりだったのに……


 名無しのプレッパーズさん

 あの時はそれこそ人類の滅亡だって確信してました。


 名無しのプレッパーズさん

 急いで買い占めに走る連中を高見で嘲笑ってたのに……


 名無しのプレッパーズさん

 その時は……来ませんでした!


 名無しのプレッパーズさん

 今年こそ来るよ。


 名無しのプレッパーズさん

 アンドロイドが市販された時はついにこの時が来たって思ってたのに!


 名無しのプレッパーズさん

 おは爺


 名無しのプレッパーズさん

 一体いつの時代の生まれだよ……


 名無しのプレッパーズさん

 AIに人類が滅ぼされる可能性は未だに残っている!


 名無しのプレッパーズさん

 せやな!


 名無しのプレッパーズさん

 確かに。


 名無しのプレッパーズさん

 来る来る詐欺と今年はこそ詐欺。


 名無しのプレッパーズさん

 保存の効く食糧ばかり集めてたのに、賞味期限切れちゃったんですけど!


 名無しのプレッパーズさん

 俺は食べ尽くしちゃったぞ♡


 名無しのプレッパーズさん

 ↑はプレッパーズ名乗るな


 名無しのプレッパーズさん

 もう名乗って無いんだよなあ


 名無しのプレッパーズさん

 悲しいなあ


 名無しのプレッパーズさん

 滅ばない人類が悪い。


 名無しのプレッパーズさん

 暴論極まってて草


 名無しのプレッパーズさん

 この半端者共め。食料よし! 緊急用のマナクリスタルよし! 医療品よし! 武器よし! いつでも来い世紀末!


 名無しのプレッパーズさん

 体重は?


 名無しのプレッパーズさん

 ウエストは?


 名無しのプレッパーズさん

 ……………


 名無しのプレッパーズさん

 黙ったぞw


 名無しのプレッパーズさん

 悪しみたい……ですね……


 名無しのプレッパーズさん

 はあーーーー駄目じゃん。


 名無しのプレッパーズさん

 飢えてもいい様に蓄えてるんでしょ(精一杯の擁護)


 名無しのプレッパーズさん

 世紀末来る前に生活習慣病で死ぬプレッパーズなんて、それこそ半端者極まってるんですけど!(大声)


 名無しのプレッパーズさん

 これっぽっちも備えれてないですね。


 名無しのプレッパーズさん

 あ、仕事行ってくる。


 名無しのプレッパーズさん

 俺もそろそろ


 名無しのプレッパーズさん

 は?


 名無しのプレッパーズさん

 何言ってんだ?


 名無しのプレッパーズさん

 プレッパーズがシェルターから出るって何考えてんだお前ら?


 名無しのプレッパーズさん

 シェルターから出ずにお前らどうやって生活してんだよw


 名無しのプレッパーズさん

 お聞きしたいんですけど、お宅らの言うシェルターって自分の部屋の事じゃないですよねえ?


 名無しのプレッパーズさん

 …………


 名無しのプレッパーズさん

 また黙った奴が出たぞw


 名無しのプレッパーズさん

 脛に傷がある奴多すぎだろw


 名無しのプレッパーズさん

(そういえ今年シェルターの中見てないな……)


 名無しのプレッパーズさん

「ちゅうちゅう」


 名無しのプレッパーズさん

 ブレッパーズの天敵ネズミちゃんおはよう。


 名無しのプレッパーズさん

 いたらカミさんがシェルターから飛び出すからちゃんと始末しとけよ。


 名無しのプレッパーズさん

 見ちゃったら中の方が安全でも、そんなの頭から吹っ飛ぶからな。(経験則)


 名無しのプレッパーズさん

(シェルターの鍵どこやったっけな……)


 名無しのプレッパーズさん

 論外だろw


 名無しのプレッパーズさん

 このスレから出て行けw


 名無しのプレッパーズさん

 待っても待っても世紀末来ないんだもん!(:_;)


 名無しのプレッパーズさん

 来るから安心しろ


 名無しのプレッパーズさん

 んだんだ


 名無しのプレッパーズさん

 じゃあ仕事行ってきます


 名無しのプレッパーズさん

 いてら


 名無しのプレッパーズさん

 てらー


 名無しのプレッパーズさん

 やっぱ来ないから外出てるんだろ!


 名無しのプレッパーズさん

 真昼間から仕事ってどうなってんだ?


 名無しのプレッパーズさん

 夜勤なんやろ


 名無しのプレッパーズさん

 ああね。


 名無しのプレッパーズさん

 もう気が付いたら12時か。


 名無しのプレッパーズさん

 だね


 名無しのプレッパーズさん

 ん?




 旧魔法暦2962年 10月27日12時00分00秒 "終末戦争"開始時刻のサルベージされた資料ログ


 同時刻 ファル共和国首都 アリーナに超破壊爆弾搭載ミサイル着弾


 ◆


 ◆


 ◆



『現在マク地帯での緊張は続いており、我が軍に対抗してファル共和国軍も行動を活発化。専門家の意見では、歴史上最も緊張状態にあった5年前に匹敵した2年前に、それと比べても全く劣っていない去年を更に凌駕している可能性があると指摘しています。そのため我が帝国政府は、不用意な買いだめを控えるよう声明を発表し、市民もこれに従い特に混乱は起こっていません』


『次のニュースです。マガン工場で起こったストライキですが、首謀者の一人にファル共和国の工作員が確認されたため工場を軍が制圧しました。幸い負傷者を出すことなく工作員を確保し、労働者も罪を問われずに一般業務に戻っているとの事です』


『続いて政府から発表された雇用統計ですが、去年度に比べて2%上昇し、これで10年連続の上昇となりました』


 ◆


『特集コーナーです。先週行われた帝国同盟国会議に対抗して、共和国が宣言した世界代表会議について専門家の方から意見をお伺いしたいともいます』


『これは共和国の焦りが生み出した宣言でしょう。何故なら同盟国の数において帝国は共和国を圧倒しています。それを危惧して世界規模で意見を調節する機関を設立など、そんな物は我々を抑え込もうとする前準備にしか思えません』


『しかも超破壊爆弾の数的制限なども意見に盛り込んだとか』


『ええ、これも浅知恵としか言えません。正面戦力で互角な以上、勝敗を決するのは超破壊爆弾の数です。恐らく合意されても共和国はその数を減らす事はないでしょう。つまり、我々だけが損をすることになります』


『ですが、維持費など費用の観点から見るとどうなのでしょう』


『仰る通り、超破壊爆弾の維持費が安いとは決して言えません。ですが幸い我が国の経済は健全です。その点において特に問題はないでしょう』


『では政府もこの世界会議宣言に同意する事は無いと』


『まず間違いないでしょう。超破壊爆弾の削減など、百害あってい』



 旧魔法暦2962年 10月27日12時00分00秒 "終末戦争"開始時刻のサルベージされた資料ログ


 同時刻 グレイ帝国首都 バーガスに超破壊爆弾搭載ミサイル着弾


 ◆


 ファル共和国都市 ハルナ駐屯地、都市カリオン、都市ラーラ、---------------------------------に超破壊爆弾搭載ミサイル着弾


 グレイ帝国側 都市バスタン、マリン軍事基地、タイオ空軍基地、-----------------------------------------に超破壊爆弾搭載ミサイル着弾


 両国の"報復"攻撃により、超破壊爆弾搭載ミサイルによる無制限攻撃開始。両国主要都市、軍事基地の全てに着弾。


 両国の最終戦争コード、"ゼロデイ"、並びに"オールデリート"が発令。プロトコルに従い、秘匿ミサイルサイロと戦略級潜水艦が世界無差別攻撃を開始。


 サマン共和国、ルーファスタ合衆国、ガルガス連邦-------------------------------------に着弾。


 ーーーーーーーーーーー着弾。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー着弾。


 ーーーーーー着弾。


 ーーーー着弾


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー着弾。


 ◆


 最終戦争に関する調査書。


 ーどんなに調べてもこれ以上分かる事が無い。こんな馬鹿げたことが起こった原因が分からない事以上に馬鹿な話があるか?ー

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