4.バトル・トゥゲザー

ちょっとマジでヤバイトゥルー・ガチかもしれんな」


 かかとをボウで過たず射抜かシューティング・スターされちまった。これでは到底、ヤツらから逃げることは出来ない。俺は黒いバンダナを結び直し、腹を括る。


 背後に殺意を感じながら流れる汗と血を拭う。どうやら今日の指揮官コマンドー殿と猟犬ハウンド・ドッグは、かなり腕が立つらしい。一向に振り切れる気がしないどころか、徐々に追い詰められている。


「メランコリーだゼ」


 行き止まりだ。路地の終わりデッドエンドと袋のネズミ、迫り来る顔と顔とフェイス。

 どうやら計算どおりチェックメイトってワケらしい――参ったね、どうも。


「アハハハハ! 楽しい鬼ごっこチェイス・ゲームも終わりだね!」


 集団を先導するsexyセクシー深紅の袈裟レッド・ドレスが高らかに笑った。彼女の背後には、数えるのも億劫なほど大勢のメニー・メニー・メニー白い袈裟ホワイト・ドレスが控えている。


 深紅の袈裟レッド・ドレス巨大な剣クレイモアを肩に担ぎ直し、血に飢えたオーガの瞳キリング・アイズで俺を真っすぐに射抜いシューティングスターした。


救済教会ヴァ・ジラヤッテに唾を吐いた罪は重いよ! これからアンタは拷問にかけられて、目的から背後バックに付いてる組織、果ては家族構成まで洗いざらい吐かされるのさ! 覚悟はできてるかいベイビー?」


「ほう、俺のことが知りたいのかアバズレ? いいだろう、教えてやる。俺の名はアイ・アムアキハル。夜魔潟やまがた県から来た不器用な男チェリーベイブさ。俺の背後に組織はなくアイ・アム・ロンリーウルフそして家族すらいないアンド・ヘブンリーロンリネス


「バカにしてんのか、お前?」


「おいおい、俺はいつだってマジで真剣トゥルー・ガチだぜ? いつかお前らのような巨大麻薬シンジゲートクソったれどもを地上から抹消してやるのさ」


「アー……コカインのキメすぎだね、こりゃ。アンタみたいな発狂青年アポカリプス・ボーイにやられちまうとは、ジェニー・ウォーカーも焼きが回ったね。橙の袈裟オレンジ・ドレス貫禄かんろくも地に落ちたモンだ」


深紅の袈裟レッド・ドレス巨大な剣クレイモアの切っ先を俺に向け、刺突の構えを見せた。


「だがアタシは最高教師グランド・マスターの中でも威力統治者フェルト・イェーガー教師ビショップだ! 橙の袈裟オレンジ・ドレスのように殺せるだなんて思うなよ!」


「いやそれ、ヤッってみなきゃ分かんなくね?笑」


 俺が軽反動全自動掃射砲インスタント・ガトリングガンを構えるのと同時に、深紅の袈裟レッド・ドレス巨大な剣クレイモアが、空を切り裂いて飛翔フライアウェイした。まさか投擲ワイルド・ピッチングとはな。


(あの構えはフェイントフェイクだったってワケね? 一杯喰わせやがってマザーファッ〇ー……!)


 緊急回避エマージェンシー・ステップを試みるも、かかと激痛走るラン・ザ・ペイン――! 思うように動けぬ! 脳裏に走馬灯リフレイン・ホースが駆け巡った、その時だった。


「ドォォォォォォォォォォォォアッッッ!!」


 突如、上空から野獣の雄たけびワイルド・クライが降り注ぐ! 雄々しく屈強なゴリラが、俺たちの間に急転直下メテオ・インパクトしてきやがった!


「なんだい!? あんなのがいるなんて聞いてないよ!?」


「ウホホホホッホホホホッホーーイ!!」


 ゴリラは巨大な手ビッグ・ハンドをかざし、巨大な剣クレイモアを片手で受け止める! そのまま握りしめて破壊ッッ!! DGRRRRRRRRSH!! 無残に散った剣の破片が夜闇に舞うッ! 


「馬鹿な……! ウルツァイト鉱製のクレイモアを素手で破壊するだと!?」


「ドォォォォォォォォォォォォアッッッ!!」

 

 ゴリラはそのまま深紅の袈裟レッド・ドレス猪突猛進ボア・ザ・フューリアス・ラッシュッッ!! 太く強靭な両腕が彼女を包みこむ……! 恐ろしき愛の抱擁ラブ・トゥゲザーである!


「ア"ッア"ア"ア"ア"ッッア"ア"ア"!」


 絶叫、そして粉砕スクリーミング&デモリッション……! 深紅の袈裟レッド・ドレスの腕が力なく垂れると、ゴリラはかつて人だった肉塊びっくりド〇キーを手近なビルへ向かって放り捨てた。


 それから先は、殺戮パーティーだった。白い袈裟ホワイト・ドレスたちは必至で逃げようとしたが、黒い暴力ブラック・ディザスターから逃れることは出来ない。一人、また一人、肉塊へと姿を変えてゆく。路地裏が紅く染まってゆく。その中で俺と、そしてゴリラだけが生きて月光に照らされているトゥルーだった


「よォ……また会えるとはな」


 だが俺は、そのゴリラに見覚えがあった。つい先日、アツいLIVEトゥルー・モーメントを共にしたゴリラだ。見間違えるはずもない。あれだけのサウンドを交わし合ったのだから。


恩に着るゼサンキューベイベー。貸し一つだな。……言葉、分かるか? 日本語ジャパニーズ、OK?」


「問題ない。これでも語学には精通している方でね」


「いやめっちゃ流暢かよ笑」


「ゴリラが人の言葉を話すのは、それほど不自然かな?」


「やれやれ」


 とんだクール・ガイだぜ。

 俺は小さくため息を吐いて、ルーシー・ストライクを二本ダブルで吸った。





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