第20話 N簡易裁判所公判4 被告人質問③

 K弁護人は神野の質問に答えながら、質問を続けた。


「まず、思い当たる1つ目の事を話して下さい」

「最初は、8年ぐらい前の事ですが、元々Kスポーツジムはチェックイン後、キーを窓口に預けておいて外出が可能だったんですね。

 ところが、ある日突然予告なく外出が禁止され窓口で止められました。その時、窓口の係に事前に何の予告もない旨クレームをつけて、そのまま外出しました。 

 翌日、店長に話をつけようとしたんですが居留守を使われ、代わりに応対に出た副店長に話しておきました。ただ、これ以後は外出はやめました」


「その他のも同じようなクレームですか?」

「今のは単純な例ですが、こちらのが一番大きいクレームで、先方も勝手に一番不快に感じたんじゃないかと思います。 

 4年ほど前の10月に消費税が5%から8%に引き上げられました。ほとんどの会員は月会員で、月毎に口座引き落としされるんで問題ありません。私や一部の古い会員は年会員で、私の場合、4月に一年分クレジットで支払い済みなんです。

 消費税引き上げ前に年会費として支払い済みにも拘わらず10月~3月分を3%相当分請求されました。これはどう考えても不正請求であり明確に抗議しようとしましたが、例のごとく店長は居留守で代役の女性が応対しましたが、きっちりとクレームはつけときました。たかが、3000円程度ですが、額の問題ではないので」


「そのクレームにより、Kスポーツジムは貴方の事をどう思われていると貴方は考えているんですか?」

「その後のクレームも含めて、『こいつはクレーマーだから気をつけろ』ということになっているんじゃないかと」


「Kスポーツジムは貴方をどうしたいと思っていると、貴方は考えていますか?」

「常識で考えたら、退会させたいんじゃないでしょうか」


「今回の件でKスポーツジムから貴方に、明確に注意等ありましたか?」

「ええ、2日後に。私がスタジオでストレッチングをやっていると店長が

やってきてプライベートな話があるといって個室に案内され、今回の件を訊かれましたね」


「店長から貴方に対して、原告女性の臀部を触ったとかいった質問はありましたか?」

「ありました」


「その時、貴方はどう答えましたか?」

「『触ったという認識はない。まあちょっと当たったのは確か』だと」


「その説明を受けて、Kスポーツジムはどのように対応したのですか?」

「即、『はっきり触ったと言ったんだから、すぐ退会させる』といった事を言ってましたね」


「貴方は故意に触ったんじゃないという事を店長に伝えたんですよね?」

「『手が当たったとか触れたとかいった認識はあるが…』という事は言ったと思うんですが」


「貴方の認識からすると、単にアクシデントで当たってしまったという事を伝えたかったんじゃないですか?」

「まあそうですね。アクシデントと言えばアクシデントですね」


「じゃあ、アクシデントで不快な思いをさせてしまったという申し訳ないという気持ち、そんな思いはあったんですか?」

「まあねえ。あそこまで強烈に言ってきたんで、(本当にそんな不快な思いをさせたんかな?) と、ちょっと驚きましたけどね」


「アクシデントで、そこまで咎められる事はないという気持ちは持ちませんでしたか?」

「当然そう思いました。だからちょっと反論しましたけどね」


「どんな反論をされたんですか?」

「あまり覚えてないんですが、頭に血が上ってたんで荒っぽい言い方だったと…」


「Kスポーツジムから、明確に『退会して下さい』と言われたんですか?」

「ええ、『退会してもらう事になるんで、来てはいけない』みたいな言い方を」


「出入り禁止みたいな言い方をされたんですね?」

「はい。ただ、『もう一度本人に確認するので、それで警察に被害届を出すか判断する』と言ってました」


「その後、Kスポーツジムはどういう話を持ってきたんですか?」

「暫く音沙汰がなかったんで、警察沙汰にするような事ではないと判断したんだと、その時は思いました」


「その時はそう思ったけど、どうなったんですか?」

「元々、翌月ジムを乗換する予定だったので、その準備をしていたんですが、新しくマシンが搬入されたとき、ステアマスターが撤去されたことを知りました。それなら1ケ月乗換を早めようと、受付で相談したら許可を得たのは良かったんですが、半年後、1年後の復帰の可否を確認したら、再入会は不可と言われました」


「再入会は不可と言われ、貴方はどういう風に言われたんですか?」

「『納得はできない。対抗措置を取らしてもらう』と、ちょっと捨て台詞で」


「強制的に退会処分を受けたということになるんですかね?」

「いや。先ほど言いましたようにその月限りで退会するのはこちらの希望で」


「今は同じスポーツジムに通われているんでしたっけ?」

「えっ? 違います。他の…、2年前から考えてはいたんですが……」


「時間も長引いてきているので、端的に答えていただければ」

「その後、Gスポーツジムに行って、今は近所のフィットネスジムに行ってます」



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