犯人はS

空木トウマ

第1話

早朝5時。

冬の山はまだ真っ暗だ。

僕らが住んでいる屋敷は、人里離れた村の山の中にあった。

屋敷は2階建て。レンガ造りの古い洋館だ。

かなり広い。部屋数は全部で9室ある。

1階には食堂がある。

中央には全部で10人座れるテーブルがある。

そこで僕は屋敷で一緒に住んでいる絵里、冴子と並んでテーブルに座っていた。

ヒーターをきかせているので、部屋の中は温かい。

「お待たせしました」

男がドアを開けて食堂に入ってきた。それから注意深く、ジロジロと僕達を観察した。

男がそういう態度をとるのは自然だった。

なぜなら彼は刑事だったからだ。

そしてその刑事をこの屋敷へ呼んだのは、他でもない僕達だった。

その理由は屋敷でおこったある殺人事件のためだった。

刑事の名前は井上といった。

淡白な顔立ちをしていた。

男性で年齢は20代後半くらいに見えた。

痩せてヒョロッとしていた。

身体にぴったりとした黒い背広を着ていた。

30分前に井上を玄関で出迎えた時、N県警の警部だと言い警察手帳を見せた。

やってきたのは井上1人だけだった。鑑識は後から来ると言った。

こういった事件には慣れているのだろうか。テキパキと段取りをつけた。

そして事件現場である書斎へ、検証に行ったというわけだ。

僕らはまず、それぞれ自己紹介した。

「橋本健太です」

「篠田絵里です」

「竹田冴子です」

僕はネイビーのスウェットトレーナー、ベージュのチノパンをはいていた。

絵里は白いニット、白いタイトスカートをはいていた。

髪は黒のロングだった。

冴子は黒のニットワンピース、グレーのパーカーを着ていた。

小顔で、少し茶髪がかったボブにしていた。

僕が19、絵里と冴子は18歳だった。

井上刑事が席に座った。

「現場の状況は今見てきて分かりました。まあ、あなた方も見ての通りまず他殺と見て間違いないでしょう。益田さんは何者かに背中を刺されて殺されたんです。凶器のナイフは、市販されているものです。誰でも用意するのは簡単でしょう」

そう。

殺されたのはこの屋敷の主人、益田孝一だった。

僕ら3人に対する事情聴取が始まった。




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