第3話 お前はもう、詰んでいる

「ううぅ……梅雨なんて嫌いだ……どうしてこんな事に……」

「そりゃ先輩の自業自得ですね」

「まぁ小鳥遊の言う通りなんだけどさ、実際にそう言われるとキツイものが……

「部長から聞きましたよ? 私の事オカズにしようとしたんですって? 止めはしませんが、せめて家に帰るまで、もう少し自重出来なかったんですか……?」

「ちょ、宮内先輩!? ちゃんと説明しました!? 俺そこまで言ってませんよね!!?」


 雨の中での校庭ダッシュから帰ってきた数馬は、濡れた体操着から爽やか体操着へと着替え終わった千尋に冷たい声をかけられ動揺し、部室の傍で佇んでいるミリアの元に駆け寄った。


「え〜、どうかしら〜〜」

「くっ、またこの先輩は……!!」

 流れるように白々しいミリアの態度に、すぐに察したのか数馬はきびすを返す。


有り体に言えば、ミリアによる数馬への悪ふざけである。

何かと突っかかってくれる数馬の性格は、ミリアにとって好都合だったらしい。

当然、何度も行なっていれば数馬も察しが良くなる訳で、今回も誤解を解くべく千尋の元へと詰め寄り、訂正を始める。


「いいか小鳥遊! 俺は決してお前をオカズにしようなんてしていない! それだけはわかってくれ!!」

「実際は千尋ちゃんの下着姿を妄想してたんだもんね〜」

「先輩はちょっと黙っててください!!」

「はーい(・x・)」

後輩に言われるがままお口を某サンリオキャラ並みに固く閉じるミリア。

「ふぅ……これで邪魔者は居なくなった。さ、話の続きをしようか」

「え、何をですか?」

「ほえ……?」

ミリアを黙らせた事で誤解を解く事ができると数馬は思ったのだろう。


だが、それは大いなる間違い。一見正しいと思える行動も、敗北へのカウントダウンを一歩進めたのに他ならないのだから。



「え、もしかして先輩ってば、オカズにしていなければセーフとか思ってません?」

「あの。小鳥遊……?」

「妄想も十分アウトですからね、先輩。大いに反省してください」


そう、数馬はもう既に詰んでいるのである。

ドン引きしながら先輩である数馬を冷ややかな目で見ている千尋の様子から、それは明らかだった。

赤い髪とのギャップも相まってそれはそれは極寒レベルの冷たさ。

そんな千尋に数馬はただただ、気力の無い返事をするしか無かった。

「ういっす……」

と。



───────


三話目を読んでいただきありがとうございます。

引き続き次の話を読んで頂ければ幸いです。


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