第15話 ツアー打ち上げ

今日はカカドゥ最後の日だ。


サソリも出ず、ゆっくり眠れてよかった。


朝食のサンドウィッチを食べて、最後のブッシュウォーキングへ。


前回、来れなかった所へ来れた喜びと達成感、そしてここまで来たと言う感動と、また次の目的地を目指す寂しさ、色んな想いが胸で響いていた。


とにかく、残りの時間を目一杯楽しみたい。


長い山道を歩き続けたあとは、びっしょりかいた汗をいつものように自然の川に飛び込み、洗い流す。


ツアーメンバーも慣れたもので、みんな当たり前のように川をシャワー代わりにしている。


ここの川では崖から飛び込んだり、洞窟のように入り組んだ穴に潜って泳いだり、とても楽しんだ。


ひとしきり泳いだあとは、アボリジニのカルチャーセンターへ。


彼らの昔の生活を展示している施設。

原始のような、自然の中での暮らし。

食べものや、コミニュケーションである独特の壁画。


英語がろくに読めない私は視覚でしか理解できないことに悔しい思いをしたが、それでもこの生活のすごさはわかる。


はじめて、自分たちと違う人種が来たときはどんな気持ちだったんだろう?

ふと、そんなことを思いながら、ブルームで見た犯罪者のアボリジニのことが頭をよぎった。

深い溝を考えざるを得なかった。


帰りのバスではみんな景色を見ながら想いに耽る。

疲れて眠ったり、それぞれの時間を過ごしながら無事にダーウィンの街に帰ってきたことに安心する。


そして、このあとはみんなで集まってディナー兼打ち上げである。


会場はパブ。

ツアーメンバーみんなが集まり、ビール片手に宴会の始まり。


私も疲れきった体に冷たいビールを流し込み、ここぞとばかりに酒の力を借りて、その場に馴染む努力を。


みんなも酒が進むにつれ、どんどん会話が弾む。フランス人の女子3人組、ドイツ人のマークス、アジモネ、ジョー。ガイドのバーニー。


みんな、とても陽気で楽しいメンツだ。


夜が更けてきた中、パブではゲームタイムに。

ディジュリドゥをみんなで吹くいつもの催しを観客側で見ていたが、なんと私も前に連れ出され参加することに。



何かしら始まるゲームのルールを説明され、実際の例を見せてくれる。


どうやら股にビール瓶を挟んでコップ注ぐゲームようだ。


恥ずかしさと照れの感情でいっぱいだったが、立たされたからには仕方がない。


思い切ってゲームに参加する。

しかし、見様見真似でやってみるも、意外と難しくて、うまくいかず。


失敗する自分が笑いの歓声に包まれる中、参加したことをまずはよくやったと褒めてやる。


そして、そのあとは欧米人特有のダンスタイム。 


ノリノリの音楽がパブに鳴り響く。


私はこの上なく、踊りが嫌いだ。

理由は、踊れないからである。


リズム感はあるはず。

しかし、体の関節が硬いのかもしれない。踊る姿は自分で見てもブサイクで、きもい。 


なので、ひたすら避けて通ってきたこのダンスタイムだが、もみくちゃにされるうちにどうでも良くなってきた。


ここまで周りに囲まれてたら、下手も上手いもないだろう。ということで、ノリノリの気分で踊りまくった。


フランス人の女子組の1人、セシーラが耳元で「あなた、もっと喋りなさいよ!もっと勉強したら、絶対楽しいから!」みたいなことを言って励ましてくれた。


おぉ、やっぱり俺は無口なジャパニーズと思われてたみたいやな。

くそぉ、日本語なら俺のマシンガントークを食らわせてやるのに。


しかし、もっともな事を言われ、反省とともに、嬉しさもある。ありがとう、セシーラ。

とても励みになりました。


場も終焉に近づき、みんなお別れの挨拶を。


カカドゥツアー、楽しかったなぁ。


まだまだ未開の地があり、冒険心を掻き立たせるオーストラリアの大自然。


ガイドのバーニーはじめ、ここで会ったみんなに感謝する。


またいつか来たいな。

そんな思いで宿に帰る途中、セシーラがパブで出会った男と路地裏でブチュブチュしていた。


なんや、お前、そんな軽い女やったんか。と、ちょっと切ない気持ちで家路に着いた。


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