ホラーの皮を被ったお姉ちゃん推し小説


 半年ぶりに再会する愛しのお姉ちゃん。
 パーフェクトさに磨きをかけたお姉ちゃんにすっかり心奪われる私であったが、そこに突然の来客。
 招かれざるその人は自分のことを「お姉ちゃん」だと言い放ち……



 様々な都市伝説をベースとして、ゾッとするホラーに仕上がっている本作であるが、真の魅力はタイトルにもある「お姉ちゃん」にあった。
 描写が詳細にあるわけではないが、語り手がお姉ちゃん好きの妹さんというのもあって、非常に魅力的に……魔性を持って描かれている。
 本編は随分ぶっ飛んでいて怖い話なのだが、同時並行してオアシス的な存在であるお姉ちゃんが語りかけるので、読んでいるこちらまでもが、

「一体、何を迷うことがある?」

 となってしまうのだ。


 この作品に限らず、作者様の文章には魔性が宿っている。
 勢いとか、語り手と合う自然に砕けた言い回しもそうなのだが、割と複雑な設定をさらっと説明したり、べたべたせずとも感情を伝える技量が高い。
 というわけで、読みやすい読みやすいと進めていくと作中世界にどっぷり浸かる。この読書感は無我夢中、トリップに近いのかもしれない。
 ホラーでも、SFでも、ファンタジーでもだが、色んなジャンルでこの不快のないライトな文章が登場してきたらさぞやゾクゾクすることだろう。