第24話 会議は会議室(応接室)で起こっている

 「レティシアよ、お主先程面接すると言っていなかったか?」



 「顔を合わせて自己紹介すればそれはもう、立派な面接よ。」

 都合がいいかも知れないのだが、レティシアの鑑定はそれなりにその人物の事を知る事が出来る。


 普段は敢えて全てを見ないようにセーブしているけれど、万一犯罪者や予備軍だった場合対処が面倒だからだ。


 しかし、見なければ良かったと思う項目もあった。

 全員、状態がレティシアお姉さまLOVEと出ていたのだ。


 それと、一人王家に連なるものが混じっていたのも問題だった。

 見なければ良かったとは思うが、それは結果的に面倒くさい事になるだろうなと自分で印象を描いているからに他ならない。

 

 第一王子や第一王女に嫌な印象はないけれど、王はちょっとどうかなという認識である。

 教皇と一緒に、来るべき魔族との戦いのために、冒険者として勇者らとレベルアップして来いと命じた一人だからである。



 先程ギルドマスターに促され一人ずつ自己紹介をした時の事をレティシアは思い出す。


 一番ギルドマスターに近い所にいる150cmくらいの少女から始まった。

 腰まで伸びた綺麗な金髪が印象的なお嬢様。

 アルテイシア・アンドゥ・カッターフォールンだ。 

 彼女の実家は略してアンカツ家と言われる事が多い。



 「アルテイシア・アンドゥ・カッターフォールンと申します。アルテ……とお呼びくださいお姉さま。」

 潤んだ瞳と緩んだ口元と火照った頬でレティシアを見つめている。

 公爵家へと婿入りした王弟の令嬢。

 年齢は17歳とレティシアより一つ下。


 彼女は物を動かす技術に長けている。天職はそこからも推定出来る通り、人形師である。

 レティシアに救って貰った時の記憶は微かに残っており、その時から既に落ちていた。

 目覚めて最初に行ったのは新しい人形作り。

 静養にと与えられた部屋にはミニレティシア人形、通称レティシアフィギュアが置いてある。

 毎晩お祈りを捧げて口付けをしてから寝ているのは、一緒に救出された他のメンバーにも内緒である。



 名前、長いしアルテだったら呼びやすくて良いなと思っていた。

 長いのは自己紹介もなので回想もレティシアの脳内で編集される。


 ラフィー・ファビュラス、17歳裁縫師。銀色と言うよりは灰色の長い髪を首の後ろで結んでいる、おとなしめの印象を受ける。

 ラモーヌ・ジメロ、17歳整理員。肩まで掛かる、青み掛かった濃い茶色の独特の髪の毛。可愛いと言うよりは美人という感じ。

 ユキ・チャン、東の国からやってきた17歳料理人。髪は白く、肌も白っぽいため白雪姫と言われる事がある。しかし魔物を食べ物と思う節がある。

 カリン・ダイダイ、薄い茶色の太陽の光で橙色に見える綺麗な色が特徴的で、やはり髪は肩までで揃えてある。


 ロング2セミロング3という髪の長さで、色が同じだったら見分けがつくか自身のないレティシアだった。

 


 全員がラッテの先輩であり、あのクエストに後方支援という形で参加していたというわけだ。

 どう見繕っても、戦闘で冒険者を続けていけるとは思えない組み合わせでもあった。

 応援団によるバフとデバフ、人形による攻撃、場合によっては料理人が刃物を使えるかという想像しか出来ない。



 「では皆さんには私のアトリエの従業員として雇います。希望があれば住み込……」


 「住み込みでお願いします!」×5

 最後まで言う前に全員が住み込みを希望していた。

 

 「あ、そう。それじゃぁ後で部屋割を決めようかしらね。」


 そして仕事内容を説明し役割り・担当を決めていく。

 必要とあらば、製作にも携わると言う条件も付け加えて。


 「そ、それでは私が作成したフィギュ……人形も商品化出来るという事でしょうか。付与術で何かが上がったり御利益があれば売れそうです。」

 応援団のバフの中に永続付与というのがあるので、アルテの申し出は可能だと判断する。


 もっとも、レティシアが加護を使えばとんでもないものが出来てしまいそうであるが。


 料理人のユキはたまに食材採取に行きたいとも言う。

 新鮮な食材は市場で買えるのだが、自分で狩ったもので創作するのも楽しいという。


 全員がなんだかんだと、魔物素材で何かしらやりたいという希望があるため、たまに狩りに出る時間が欲しいとも伝えていた。


 「なぁ、レティシアよ。その会議はここでする必要があるのか?」

 呆れた表情でレイコ・ヤソジマは話を中断させた。


 「決めてからアトリエに行かないと現場が混乱するでしょう。彼女らも現場も大早く慣れてもらわないと。」

 

 その後もやいのやいのと姦しくなりながらも会議は進められ、小一時間経過するとそれも収まった。



 「カルナよ、1時間残業付けて良いぞ。」

 レイコはカルナにせめてもの労いとして残業代を進呈した。

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