十七話目

 私が連行してきたドラジエントは優秀としか言いようがなかった。設計図だって来て一日程で完成させていた。そして今度は材料を漁って適当に高機能の義足を作り始めていた。ニコライの足のサイズを測りに行っていた。きっと明後日には仮の義足を完成させるだろう。それは彼が言っていたこと。既に高機能なのにまだ仮でさらに良い機能をつけようと言うのだ。その発想すらも天才的だ。アディーレも想像以上の科学力を持っていた。長年牢屋にいたというのにあの知識。そして二人のコンビは最強だった。だから義足の完成は三ヶ月もかからないだろう。そっと口角を上げる。

 私は今、C社会主義連邦国の総統とR王国の国王など複数の国のトップによる食事会兼会議に参加するために電車に乗っていた。開催場所は中立国のX共和国。まだ日が傾いていない時間帯で光を浴びて電車で揺さぶられる。ようやくニコライと共に戦場に立つことができるのか。




 俺は今、とても驚愕していた。理由はドラジエントの天才さに驚いている。何故って彼は来てまだそんなに経っていないのに仮の義足を完成させていた。彼は今、俺に義足をつけている。真剣な顔をしてねじを回す。そばで資料を持ち、確認するアディーレ科学研究部隊とドラジエントの軍需機器発明部隊長ジェシカ・ヒューズ。彼女は短い赤髪を揺らしながら真剣に資料を見ていた。彼女は小柄でアディーレと同じ程の体の大きさ。そんな彼女はこの国で数少ない天才技師だ。そんな彼女すらでもドラジエントに任せている。

「できた!」

 顔を明るくしてドラジエントはそう言った。アディーレも嬉しそうにして俺に近づいてきた。ジェシカが「ちょっとニコライさん。動いてみて?」というか言うから俺は立ち上がってみた。義足は想像以上にバランスの良いものだった。しかしやはり慣れていないので転びそうになってしまう。

「いい感じかも!じゃあ暫くこのままね。」

 ドラジエントは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら言った。アディーレと手を取り合ってジャンプしていた。ジェシカもつニコッと笑って「いいじゃん!!」と言ってきた。あとはリハビリをしてこの義足に慣れるだけだ。俺は隣で喜ぶアディーレを見て口元が緩んだ。

「本当にありがとう。皆。」

 これで俺も戦争に出れるわ。アレクサンドルの隣で。ようやくアレクサンドルと共に戦場に立つことができるのか。




 着いた頃には日が落ちていた。いつの間には人の減った電車がガタンと音を立てて止まり始めた。キキィーと金属がすると電車は完全に止まり扉が開かれた。X共和国はレトロな街をいくつも抱えている。勉強になると思いながら周りを見ながら会場に急いだ。紅い空の下、黒い軍服を舞わせて歩く。総統である俺が一人で歩くなんていつぶりか。平等を図るためにボディガードは誰でも禁止。しかし、それは本当に平等と言えるのだろうか。言ってしまえば暗殺の絶好のチャンス。約束事なんなんて破るためにあるようなもの。ゆっくり口角を上げる。

 なんだか面白くなってきた。有名な話、我が国が取り入れている訓練で毒耐久上昇訓練がある。一般兵含めやる訓練だ。香り、舌触り、味、いくつもの毒薬を口に含み時間をおく。それで耐久性を上げ、毒の特徴を覚えて対処する。もちろん私も訓練した。総統だったから特に。毒の耐久はある。そして、暗殺防止のため、こちらにも用意させていただいた。

「あんまり目立つなよ。ヴィラ。」

「クハハハッ…任せとけって!」

 我が優秀な特殊暗殺部隊の部隊長ヴィラ・ウルフィーを連れてきた。彼は忍者のような男。信頼を置いているし、丁度良い。私の次に楽しんでいるヴィラは笑いながら軽い足取りで歩いた。

「頼りにしてるぞ。」

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