商談交渉1



「いらっしゃいませ、商業ギルド【エルドラド】本店へようこそ。今回担当させて頂くクレアと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」


商業ギルドに入ってすぐの受付にはどこぞの秘書のような仕事の出来そうなクール美女さんが数人受付窓口のカウンターに並んで座っている。

俺以外にも何人かの商人と思われるだらしなく鼻の下を伸ばしたおっさん達が、美人受付さん達に応対されている。

まぁ俺も同じ男だから他の商人連中の気持ちは分からんでもないんだが…

たぶんも商談をギルド側に都合が良くなるように仕向ける戦術の一つなんだろうねぇ…


「お客様?いかがなさいましたか?」


目に前にいる受付のお姉さんを気にせず周りの様子を伺っていると、どうしたのかと尋ねて来た。

可愛らしく小首をコテンと傾げるような仕草があざといがこれは天然なのか計算なのかは分からないが、目の前の受付嬢さんの見た目と相まって特に違和感は感じない。

っと、いかんいかん。

俺は所持品を売ってお金を稼がんといかんのだった。

元々の目的を思い出した俺は受付嬢さんの目の前へと移動し用件を伝える。


「こちらの商業ギルドは持ち寄った物は買い取っていただけますか?」


「はい、もちろんでございます!ギルドカードや身分証等はお持ちでしょうか?」


「いえ、こっちに来たのは初めてなもので、今持っているのもコレしかないんですよねぇ」


俺は衛兵さんに渡された仮の身分証を受付嬢さんに見せる。

確認すると受付嬢さんは難色を示すように難しい顔をした。


「仮の身分証だけですと買い取り自体は可能なのですが、身元の信用が弱いため、買い取り時の適正査定価格よりも大幅に減額されてしまいますが、先に当ギルドでギルドカードの発行をいたしますか?発行には大銀貨1枚または10万ガーデほど掛かりますがいかが致しますか?」


う〜む…そう来たかぁ…

まぁ確かに身元の証明が出来ないのは買い取る側としても不安しかないよなぁ…

受付嬢さんは先にギルドカードの発行を薦めてくれているが、現状、俺の所持金は全くの無一文。

向こうのお金は財布に入っているが、

こちらで価値があるとは思えな………


待てよ…?

もしかして…


俺は思いついたことを確認するため財布を取り出し、数枚の硬貨を手に持ち【鑑定】してみた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(1円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:銀貨5枚(5万ガーデ)


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おぉ!!

思った通りだ!!

我が国の造幣技術の高さよ!


というか【鑑定】さんが万能過ぎてマジで頭が上がりません。

思いつきで【鑑定】してみたもののやっぱり可能だったな。


俺が思いついたことというのはスキル【鑑定】による物の査定だ。

案の定査定することに成功した。

ここで新たに気になったのがこの世界での貨幣価値と通貨単位の相互関係だ。

査定では銀貨5枚が5万ガルドに相当すると言うことで、銀貨1枚辺り1万ガルドって事なんだろうが、銀貨以外の硬貨の種類は何種類あるんだろうか?

気になるので他の硬貨も【鑑定】してみる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(5円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:大銀貨1枚(10万ガーデ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(10円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:大銀貨2枚(20万ガーデ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(50円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:大銀貨5枚(50万ガーデ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(100円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:金貨1枚(100万ガーデ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界の硬貨(500円玉)


異世界(日本)で使われている硬貨。

エルドガーデンでの貨幣価値は無いが、使われている加工技術が非常に高く価値がある。

査定額:金貨5枚(500万ガーデ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


とりあえず硬貨全てを鑑定した結果がこんな感じだ。

なんと言うか…

メチャクチャチョロいじゃないか!?

とんでもない円高利率の国に来た気分だよ!?

換金率やべぇわ〜…


「あ、あのぉ…大丈夫ですか…?」


「へぁ!?あ、大丈夫。大丈夫ですよ〜?」


俺が鑑定結果に一人で百面相していたからか心配?した受付嬢さんが声を掛けてくれたおかげで俺は正気を取り戻す。


「とりあえずなんですが、手持ちが無いので先に買い取っていただいてからギルドカード?の発行をお願いしてもいいですかね?それとこの国でのお金の種類が何種類あるのかも知りたいのですが…」


「かしこまりました。それでは先に身分証をお持ちで無いようなので正規買取査定額よりも5割減額でのお支払いになりますがご了承下さいませ。それと貨幣の種類についてですが…」


受付嬢さんはテーブルに一枚ずつ硬貨を並べていき、それぞれの貨幣種類と価値を説明してくれた。


鉄貨…1ガーデ

青銅貨…5ガーデ

大鉄貨…10ガーデ

大青銅貨…50ガーデ

銅貨…100ガーデ

大銅貨…500ガーデ

小銀貨…1000ガーデ

銀貨…1万ガーデ

大銀貨…10万ガーデ

金貨…100万ガーデ


この他にも大きい金額の硬貨があるそうなのだが、防犯上の観点からこれ以上の硬貨は見せられないとのこと。

そりゃそうですよねぇ。

いっそ金貨まで見せてくれたことにも驚きですよ。

一般的によく使われる硬貨は鉄貨〜銀貨が多く、少し高額な買い物をする際に大銀貨や金貨、それ以上の硬貨を利用するのだそうだ。


なるほどね。

俺、覚えた。


というわけで、俺の鑑定による結果から見ても、50円玉1枚の買取価格で減額されたとしてもギルドカードとやらを発行するだけの金額は稼げるようだ。


「それじゃ、これの買取をお願いします」


「かしこまりました。拝見させて頂きますね…」


50円玉を一枚、受付嬢さんの前にある受皿へ置くと、一言置いて受付嬢さんが50円玉を手に取り見始める。

一瞬彼女の瞳の色が揺らめいたように見えて気になったが、とりあえず結果を待つ。


「……こ、これは!?失礼ですがお客様、別室をご用意致しますので査定の続きは移動していただいてからでもよろしいでしょうか?」


おや?

別室とな?





ー補足ー


以降の投稿では貨幣種類の表現ではなく、通貨単位であるガーデで金額を表記していきます。

この世界での貨幣の説明回のようなものと捉えていただければ…

貨幣表記が面倒とかは思ってないですよ…?




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