2話 防衛軍仮採用中2


俺達は配置場所で待機をしている

間もなく、ドローンを迎え撃つのだ


喉はカラカラなのに、なぜか喉は乾いていない

一度戦闘が始まると、不思議と不安感は息をひそめている


俺は無意識に陸戦銃を握り締める


陸戦銃とは、シグノイア防衛軍が採用するアサルトライフルと砲の二連装銃

砲はグレネードと散弾に対応している




「…情報1から各員、ドローン三機の接近を確認!」

インカムから声が響く


ついに俺の出番だ

前方から三つの飛行物体が見えた


よし、落ち着け

俺がやることは…、引き付けて打ち落とす、これだけだ


散弾なら広範囲に撃てるから当たるはずだ


「頼んだぞ、防御魔法(小)」


小隊長が俺達に防御魔法をかけてくれる

支援担当の魔法は、味方の強化、敵の弱体共に戦闘を左右する大きな効果を持つ


この防御魔法も銃弾を数発は防いでくれる

有るか無いかで生存率が全然違ってくるのだ



「よし、行くぞ見習い!」


「了解!」



イドル分隊長から少し離れて、俺は陸戦銃を構える

出来ればアサルトライフルで一機落としたい



フィーーーーン


三機のドローンが近づいてくる



お、三機の間隔が近いな

あれなら、範囲魔法でまとめて巻き込めるかも


「分隊長、密集してるんで風魔法を発動します!」


「分かった!」


俺は、モバイル魔法発動装置、通称モ魔を起動

モ魔のケーブルが巻物に繋がっているかを確認して実行する


モ魔が巻物の霊子情報を読み込む




load………



load……



load…




毎回思うけど、読み込み遅くねーか!?


しかも以前、読み込み途中にフリーズしやがったんだぜ!?



ダダダダダ…!


「うおわぁっ!?」



ドローンの一機が銃を撃ってきた


一発、肩をかすめたよ!?


「うおわじゃねーよ、落ち着け」


イドル分隊長は、ハンドグレネードを持って振りかぶった


「読み込み終わったら、すぐに魔法を発動しろ!」


そう言って、ハンドグレネードを投げつける



ドッゴォォォォン!



ハンドグレネードが超加速され、ドローンに命中して粉砕される

イドル分隊長の鎧に内蔵されたモーターが、腕力を強化しているようだ


「す、凄い…!」


な、なんなんだ、あの鎧は!?


…その時、やっとモ魔が読み込みが完了する

読み込んだ巻物は、風属性範囲魔法の竜巻魔法(小)だ


よし、実行可能!


モ魔はこの状態を短時間だが維持ができる

あとは、いいタイミングで発動するだけだ



フィーーーーーン



ドローンが近づいて来た


今でしょ!

俺はモ魔のエンターキー連打で実行する



ビュオオォォォォォーーーーーー!



小さな竜巻が数秒巻き起こり、ドローン二機を巻き込む


やったぜ!


「見習い、よくやった! 撃ち落とせ!!」


ドローンは互いにぶつかりながらも、風魔法の攻撃ではダメージを受けていないように見える


固いな!

だが、動きと攻撃を制限できれば問題ない!



「うわあぁぁぁぁぁ!」


ガシュッ! ガシュッ!

ダダダダダダ…ダダダダダダ…!



落ちろ落ちろ落ちろ!


俺は散弾を二発続けて発射、更にアサルトライフルでドローンを打ち続ける



ドドーン…

ガラガラガラ…



数秒後、二人の交差射撃で呆気なく三機のドローンは墜落、炎上した



「はぁはぁ…。分隊長、やりましたね…」


「ああ、後はゴブリン退治だ」


うげ、まだそれが残ってたな



俺達が小隊長に報告すると、情報担当によるゴブリンの索敵をしばらく待つことになった





小休止



「ふぅ…」


少しだけ緊張を解いていると、ふと、イドル分隊長の装備品に目が止まる



ウィィ…… ウイィィ…



イドル分隊長のアーマーは全身鎧のタイプで、モーターの音がする


俺が使う防弾アーマーは、隊員全員に支給されている上半身を包むベスト型

タイプが全然違うな


「イドル分隊長の鎧って、防衛軍の支給品じゃないんですか? 凄い力が出ますよね」


さっきの、ハンドグレネードの剛速球は凄かった


「うん? ああ、これは俺が買った強化鎧だからな。魔石を動力とするモーター式で、片手で百キロの重さを持ち上げられ、防御力も高い高性能タイプだ」


イドル分隊長はちょっと得意そうだ

自慢の装備なんだな


「自分の装備ですか。私も持ってみたいですね」


「防衛軍で支給される装備は、あくまで最低限の性能だ。より良い自分の装備を揃えるのは早ければ早いほどいい。自分の装備…、というが、これを揃えて始めて一人前とも言えるくらいだからな」


防衛軍では、銃や杖、防弾アーマーなどが装備が支給される

性能が悪いわけではないが、これ以上の性能を求める場合は自前で装備を買う必要がある


アーマーや銃、杖…

固有装備は性能が良く生存率も上がるが、値段が高いため簡単には買えない


何度も戦場に出て金を稼ぎ、武器や防具の固有装備を揃えた者

それは、それだけの実力を持っているということだ




インカムで情報担当の報告が来る


「こちら情報1。索敵終了、ゴブリンは巣穴とその周辺のみです」


「リーダー了解。射撃1、2は共にゴブリン殲滅を開始、射手1は狙撃で援護しろ」


「了解」



イドル分隊長と俺は、すぐにゴブリンの巣穴へ向かう


ゴブリンの巣穴の前はちょっとした空き地になっている

見晴らしがよく、見張りがしやすいのだろう


…だが、遠距離攻撃の射撃手からするとボーナスステージだ


「ラーズは小型杖を持ってたよな。混乱の魔石はあるか?」


「はい、一回の装填で三発撃てます」


「よし、準備が出来たら撃て。その後殲滅に入る」


俺は、魔石装填型小型杖に精神属性混乱の魔石を装填

そして、ゴブリンの群れに向けて三回振る



ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!



精神属性混乱の魔法弾が飛んでいく

当たったゴブリンがすぐに混乱効果で暴れだし、群れ全体を混乱させることに成功した


それを確認してイドル分隊長が叫ぶ


「攻撃開始!」



東側から雷属性魔法を乗せた矢が降ってくる


更に、俺とイドル分隊長のアサルトライフルが巣穴から出てくるゴブリン達を殲滅

後方からは小隊長の弱体化魔法も飛んでいっている



ダダダダダダ…ダダダダダダ…


ボシュッ! ボシュッ!


ヒュゥゥゥゥゥゥ……バチバチ…!



ゴブリン達もこん棒や錆びた剣で攻撃しようとするが…

強化魔法も無しで銃弾や魔法に勝てるわけもなく、一方的な殲滅となった


その後、ドローンの基地をしっかりと破壊しに行き、作戦完了だ



「やったな、見習い。いい戦い方だったぞ!」

イドル分隊長が声をかけてくる


「ありがとうございます。分隊長の指示のおかげです」


「お前なら、すぐに小隊配属になるかもしれんな。頑張れよ」


「はい、ありがとうございました!」



三回目の戦闘で気がついたことがある


今回の作戦は、圧倒的な勝利

正直、呆気ないほどだ


だが圧倒的でない、ということは…

仲間が死に戦力がダウン、更に仲間が死ぬという悪循環が起こってしまうということ


今日も生き残れて良かった…






隊員人事記録


氏名 ラーズ・オーティル

人種 竜人

称号 仮採用中

戦闘ランク F

固有装備 なし(防衛軍支給装備を使用)

固有特性 なし

得意戦闘

・攻撃: 中距離での射撃、杖とモ魔の魔法

・ホバーブーツでの高機動戦闘

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