江蓮のふしぎな考察録1 ー森の洋館密室事件ー

桜咲吹雪

エピローグ

 必然というものについて、考えることがある。

 いわゆる運命というやつだ。


 例えば、人との出会い。


 きっかけは今思えばそれこそ偶然だった。


 偶然にも知り合い、やがて長い年月を経て、そのひとが自分にとってかけがえのない存在となったとき、ああ、この出会いは必然だったのかと感じる。


 そして、それは昇華して、運命だったのだと思う。


 運命とは実際にあるものなのだろうか?


 それとも偶然の延長にある、結果論にすぎないのだろうか?


 このことについて、犬彦さんの意見を聞いてみたいという衝動に、俺は何度も駆られた。


 ねえ、犬彦さん、あなたは必然と偶然、運命の始まりはどちらだと思いますか?


 しかし、答えは聞かなくても分かっていた。



 「うるせえ、さっさと寝ろ」



 きっと犬彦さんはこう答えるだろう。


 犬彦さんは理屈っぽい話を嫌う。

 じろりと睨まれて終わりだ。


 犬彦さんは教えてくれない。

 だからこそ、彼の本心を聞いてみたかった。


 これは、ただの偶然ですか?


 それとも運命だったのでしょうか?


 

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