第6話

一瞬時が止まったような気がした

いやきっと止まっただろう

さっきまで人間観察をしていて何が起こったかわからずポカンと口を開けているかずき

俺らのことを好奇の目で見ていた周りの客

慌てふためく店員たち

更には窓を隔てた外の通りすがりの奴らまで俺を見ているのが目を閉じてもわかった


何が楽しくてこんな来たくもねぇカフェに来てジロジロと見られ、挙句の果てに水をかけられなきゃいけないんだ

そして俺は肝心なことを忘れていた

俺が水をかけられたならば俺に水をかけたやつもいる

そいつを眼中におさめるために俺は顔を上げた

そこには顔面蒼白の、俺と同じぐらいの歳でバイトと思わしきやつがいた

まず真っ先に目についたのはその派手髪

白に近い金髪でふわふわしている

背は小さく目は大きい

俺に怒られると思ってかプルプルと震えている

なんか

「犬みてぇ…」

つい声に出してしまったようだ

それと同時にそいつは我に返った

「すっすっすみません!!今すぐ拭くものをお持ちします!!」


その後店員3人がかりで周りの床を拭いたり机を拭いたりとにかく忙しなく動いていた

それを水で濡れた服を拭きながら呆然とみる俺

もうどうでもいいから帰りたい

するとさっきのやつが店長と思われるやつとひたすらに謝ってきた

謝られても状況は変わらない

謝るぐらいなら早く帰らせろ

そんなことを思っていたら突然派手髪が突拍子もないことを言い始めた

「この後空いてますか??お詫びさせてください!!」

「はぁ…」

咄嗟に出てきたのはこんな腑抜けた言葉だけだった

「すみません今すぐ準備してくるので少しだけ待っていてください!!」

どうして俺の周りには人の話を聞かない奴らしかいないんだ


クソみたいな一日はまだ終わらないようだ


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