第7話 契約成立

 ガスパールは歓喜の声を上げる。気持ち悪い奴だな。


「君の複利の能力のことを知ったら、それを狙ってヤバい連中が襲ってくるよ。さっきの銀行強盗とは比べ物にならないような奴らが。その時、あなたを守れるのは私しかいないの!」


 なぜ私しかいないと断言できるのだろうか? なんか、自社のサービスを利用させようとしてきていないか?


 それに引き換え、ガスパールは胡散臭いし気持ち悪いが正直だ。今まで嘘をついてきたことはない。俺の破滅するところが見たいと言っているが、破滅させようとしてきたことはない。事実、助けられてきたことの方が多い。


 だが、ガスパールに戦闘力は皆無。玲香さんに守ってもらえるのならそれはそれでありがたい。


 どうすればいい?


「複利は最強の力だ。手放すには惜しい」


「おぉ、私の力を利用しますか?」


「それはそれで危険が伴う。だから玲香さんに守ってもらう」


「ほーう、どちらも諦めるかと思っていましたが、両方取りますか」


「両方取る。ガスパールの予知能力と玲香さんの戦闘力。どちらも俺が平穏な生活を送るには必要だ。それでいいですね? 玲香さん?」


「ガスパールの危険性を間近で見てきた私としては、手放しで賛成できないけど……」


 玲香さんは明らかに不満そうだ。


「現時点の私ではガスパールを殺せないし、仕方ないね」


「フフッ、じゃあ決まりですね。正式に契約と行きましょう。私は複利の権能をあなたに与える。その代わり私はあなたの破滅する様を見届けさせてもらう。それが条件です」


 なんだ。対価として金や血液を要求されると思ったのだが、そんなことでいいのか。


「俺が破滅しなかったらどうするんだ?」


「それはそれで仕方ありません。別に何も要求しませんよ」


 案外割りの良い契約なのか? だがそううまい話があるとも思えない。油断はできない。そのための保険としての玲香さんだ。


「複利の権能を手にしたからには、危険な連中に狙われ続けることになる。それでもいいの?」


「宝くじ当選者は皆破滅する。だかガスパールといればその危険を察知できる。玲香さんとガスパール、2人の力を、俺に貸してほしいんです。頼めますか?」


「そこまで言われては仕方ありませんねぇ。危険を察知したら事前に報告すると約束しましょう」


「私も。あなたを警護するわ。代金さえ払ってもらえればね」


「え」


「ん?」


 何か重大な事実の発表があった気がする。


「お金取るんですか?」


「当たり前でしょ」


「いくら?」


「年間利用料、二千万円」


 これは地味に削られるな。

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