魔物との戦い(前編)

サハギンが来る前、僕たちは訓練の休憩がてらユキと作った弁当を食べていた。


「これをユキが作ったの?」


イリスが意外そうに言う。まあ僕達っていちょう王族だしね。


「今までは私が作っていたのですけど今回はお兄様にも手伝って頂きました!」


「リョウガも??」


…何でそんなに不思議そうな顔をしとるんだ。


「…僕が作ってたら変か?」


「いや、料理出来たんだなーって。」


「それ以前の問題だった!」


「だってリョウガっていつも剣振り回してるイメージなんだもん。」


確かにここでは剣のことしかしてないけどさ…。


「…息抜きに本を見て勉強したんだよ。美味しい物作れて損はないからな。」


「お兄様には私の料理を食べて欲しいんですけどね…。」


そんなジト目で言われても…


「でも一人で作るよりは楽だったろ?」


「そうですけど…私の気持ちの問題なんです!!」


そんなもんか?まぁいいや。


「…リョウガは…。」


「ん?」


「…料理出来きる人の方が好き?…」


少し暗い顔で聞いてくるイリス。


「僕は別にどっちでもいいと思うけど。作るの苦手って子もいるだろうし。でも一生懸命作ってくれたら嬉しいけどね。」


そう言ってユキの頭を撫でる。毎日作ってくれると当たり前に感じるけれど、大変なことだからな。


「イリスもユキに教えて貰うか?」


「っ!いいの?」


「ユキがよければだけどね。どうユキ?…ユキ?」


なんかぼーっとしてるんだけど…頭撫でてるからか?


「…はいっ…良いですよ…」


あっそのままで答えられるのね。


「良かったねイリス。」


「うん…私も頑張って頭を…。」


また何か言ってる?たまにゴニョゴニョ言ってるんだよな…。って──


「どうした?イリス?」


突然イリスが湖の方を睨み付け僕と戦っている時と似た雰囲気を出している。


「っ!危ない!」


イリスはユキと僕を突飛ばす。


「いってて…いきなりなにを…っ!」


僕とユキが座っていた場所に三又みつまたの槍が刺さっていた。


僕も慌てて湖を見ると、魚型の魔物、サハギンが5体こちらを見ていた。


「ミラレタ。コロス。ミラレタ。コロセ。」


っ!喋れるのか!てかまずい。今は戦えないユキが一緒にいるんだぞ!


「ユキ!下がれ!」


僕は腰の剣を引き抜き構える。訓練用の鉄の剣だがないよりはましだ。


くっそ!相手は5体。何故魔物がここにいる!

この湖で魔物が発見されたことなんてないはずだぞ!


イリスから声がかかる。


「リョウガは2体相手にして!私は残り3体を相手するから!」


その声が聞こえてきた時には僕達の近くにいたサハギンを言葉通り三体ほど吹き飛ばしたイリスがいた。


「大丈夫なのか!」


「私は大丈夫!それよりも自分のことに集中して!今のリョウガでもぎりぎりだと思うから!」


僕よりもかなり強いであろうイリスの言葉だ。

わからないことだらけでまだ不安だ。初めて魔物と戦うんだぞ。そんな気持ちが心にある。


でもイリスの言葉なら信じられる。


「わかった!そっちも気をつけろよ!」


イリスは大丈夫。そう無理やり自分を納得させ

戦う時の意識に切り替える。


「シネェ!」


戦闘が始まった。


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