ポトリ・14

____オレは泣いていた。




胸が締め付けられる。


苦しくて苦しくて


声を殺して、唇を噛んで泣いている。



オレの目から、オレじゃない想いが


ボロボロと涙を流させる。





慶さんは、肩を震わせ静かに泣いていた。


白い頬を紅く染め、椿色の唇を噛んで泣いている。


慶さんの涙が、真っ白な雪の上に


椿の花の様にポトリ、ポトリと


零れ落ちていく_________。





オレは、涙を拭い


慶さんを急いで引き寄せ抱き締めた。




この腕で、オレの..


俺のこの腕で_______。




「泣かないで、慶さん。」


「う・ん__。ごめんね・・。」


オレは、「ふふ。」と小さく笑い


「と、ゆーか、、

 そーゆうオレも泣いてるんだけどね。」


慶さんは、潤んだ瞳を細め笑い


「ふふ・・。そうだね。」





オレは、泣きながら笑う慶さんを見て


ハッと情景が目に浮かんだ。



___また、自分の事の様に_____



「そうだ__。」



慶さんの手を引き


ブリキの箱を持って、急いで家に入る。


「ど、どうしたの、龍一くん?」


「オレ、何か思い出したんだ。

 思い出したって言うか・・その。。

 オレじゃない想いが、幸一お祖父さんの

 想いが__。今、慶さんの笑顔見て。

 とにかく来て、お祖父さんの書斎に。」





____________




2人で、また幸一お祖父さんの書斎に戻り


オレは自分の事の様に


隠してあった鍵を探し出した。


重厚な机の引き出しは


長い年月を感じさせる音で開いた。


「ほら、慶さん開いたよ。」


「____っ。。」





引き出しの中には・・


慶之介さんへの想いが詰まっていた。



オレの口から、


ポトリ、ポトリと言葉が零れ落ちる_____。




「あぁ、懐かしいな。

 これは、お前が折った折り紙の鶴。

 これは、お前がくれた..ハンカチ。

 これは、お前が大切にしていた・・

 俺が贈った・・腕時計_____。」




想いが溢れて止まらない。


あの時の、あの時の・・


あの・・時の__________。





オレは、引き出しの奥から


古ぼけた手帳を出し


慣れた手つきで捲った。




ハラリと写真が1枚ヒラヒラと落ちた。



___アルバムの3枚の中の3枚目____




オレは拾い上げ、慶さんに手渡す。



「見て、慶さん・・。この写真の慶之介さん

 泣きながら..頬笑んでるんだよ。

 ね、さっきの..慶さんみたいだ・・。」



「うん・・。」



「慶さん、この写真ね。

 戦地へ持って行ったんだよ・・。

 この手帳と一緒に______。」




オレは、手帳をパラパラと捲り


慶さんに差し出した。



「ほら・・。

 ここ、読んでみて慶さん。」

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