ポトリ・11

__オレは知っているかの様に書斎に行って、ドアを開け


いつも使っている様に、本棚の扉を開け


幸一お祖父さんが好きだった本を、手に取った。




「これだよ__きっと。」



濃いグリーンの分厚い本を


オレは慣れた手つきで、パラリと表紙を捲った。



捲った拍子に、ハラリと1枚写真が落ちて行った。


ヒラヒラと花弁の様に、床に落ちて行った。




オレは、写真を拾い上げ、呟く。


「アルバムの3枚の中の__1枚。」


セピア色の写真には


2人の想いが詰まっていた。


幸一お祖父さんと慶之介さんが2人、


着物を着て、あの椿の木の下で立って居る写真。



「本当に__

 本当に、慶さんにソックリだ・・。」


そう思ったと同時に、懐かしいなぁ。って


あぁ、あの時のって思った。



「ねぇ、慶さん

 今、懐かしいって..思った?」


「う、うん。思ったよ。

 あと__写真、やだなって。」


「オレ、あぁ。あの時って。

 あの椿の木の前で、写真嫌いのお前を

 無理矢理、引っ張って、撮ったんだって__。」


「うん__。これも、2人の想いなんだ..。

 この写真を、思い出に入れたのかな

 兄さんが好きだった本に____。」


「う~ん。

 そうなのかな・・。」


オレは、本をパラパラと捲ってみた。




「う~ん・・っと、あれ?

 これ、何だろう。ほら、ここ..

 何か書いてあるよ?写真が貼ってた

 1ページ目のページ数の横・・

 “紅い絨毯の下に”って____。」




「あ_____。」


慧さんはその小さな文字を細い指で撫で


「この字・・。

 ・・椿の木の下______。」


慶さんはそう呟いた。



「ね、龍一くん、もしかしたら

 椿の木の下に・・きっと、きっと__。」



きっと_____。



慶さんは、オレの手首を掴み走り出した。


急いで、椿の木の下へ___


早く、早く行かなくちゃって思ってるみたいに。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る