#7

ちあき 「何だっけ?基本情報と推しポイント?」


なつみ 「そうそう。」


ふゆか 「あと、最後に一言まとめね。」


ちあき 「わかりました。えっと、このね、見るからにヘタレそうなのは、ルベンですね。推しです。アルカレッド・フォーストの2年生でウィットティグ寮所属。実はなんと、このヘタレっぷりで、唯一2年で寮長を務めております。ルベンです。それも寮の伝統上、くじ引きで決められたというね。本人は自分が寮長なんて不似合いだと思っているけど、しっかり寮長としての務めを果たしているし、その実力もある。やればできる子、ルベンです。ね~、かわいいね。ウィットティグ寮は4寮のなかでも群を抜いて個性がバラバラでどれもが強烈だから、そんな中で平々凡々の彼はそりゃもう振り回されて・・・。特に、ウィットティグ寮の前寮長、ギルバートは多分、乖離の箱庭のキャラの中で一番キャラが濃いんじゃないかな?そんな奴に気に入られて、部活も強制的に一緒のに入れさせられるし、とにかく、尻拭いは全部この子なんです。不憫可愛い。普通過ぎて影が薄いから、一部寮生にはまだ世代交代してるって思われてないからね。でも、ヘタレだってやるときはやります。キャパを超えるとすごいキレ芸を見せてくれるんだ。これまたかわいい。これで、実力はしっかり寮長クラス。なんだかんだ仕事は完璧にこなし、やるときはやる男。それがルベン。最高においしいギャップ。もはや、ギャップと書いてルベンと読む。そのくらい。」


ふゆか 「うん、ルベンの名前はしっかり覚えた。」


なつみ 「今までで一番ルベンって言葉を耳にしたなぁ・・・。」


みはる 「公式の話じゃ全然名前呼ばれないもんね。」


ふゆか 「さぁ、ちあきさん。ルベンを一言でまとめてください。」



ちあき、少し考えて。



ちあき 「ギャップルベン


みはる 「さっきの話のせいでルベンって副音声が聞こえた・・・。」


ふゆか 「マンガや小説だったらルビで上からルベンって書いてあるやつね。」


なつみ 「やばい・・・じわじわくる・・・。」


ちあき 「本当にこれしか表現できる言葉がないんだって。私の稚拙な語彙じゃ彼のすばらしさを余すところなく言葉で表現するなんて無理。」



ちあき、元の席に戻る。



ふゆか 「まぁ、気持ちはわかる。」


みはる 「オタクは推しを目の前にすると著しく語彙力が低下するからね・・・。」


ふゆか 「んじゃー、次の方にも語彙力を低下してもらいましょう!」



優しいほほえみを浮かべた男性が映る。その容姿は胸丈ほどの髪を束ね、サイドに垂らしている。



みはる「あー。」



みはる、手で顔を覆う。



ふゆか 「続きましては、みはるさんですねぇ~。」


なつみ 「みはるちゃん、現実を見なさい。」


みはる 「あぁ・・・。まだ死にたくない・・・。」


ふゆか 「はぁ~い、み・は・る・ちゃーん。」



ふゆか、みはるの手を取ると立ち上がらせて教卓の前まで連れていく。



みはる 「あぁ・・・。」


なつみ 「みはるちゃん、その人だぁれ?」


みはる 「スカル先生です・・・。」


なつみ 「みはるちゃんはその人が好きなのか~。うんうん、そうかぁ。その先生はなんの先生なの?」


みはる 「魔法生物学です・・・。」


なつみ 「うんうん、なるほどねぇ~。」


ふゆか 「園児とその先生みたいな会話だな。」


ちあき 「みはるはなつみがいないと何もできないのか。」


ふゆか 「甘やかしが過ぎるな。」


なつみ 「甘やかしてないよ。小馬鹿にしてるだけ。小さくてかわいいってだけでみはるが何もしなくても許される世界には断固反対だから。」


ちあき 「味方に見えて、とんだアンチじゃねぇか。」


なつみ 「じゃあ、みはるちゃん。どうして、みはるちゃんがスカル先生のことが好きなのか、先生にわかるように教えてくれるかな?」


ちあき 「先生って言っちゃったよ。」


みはる 「世界中旅している感じの人生経験豊富そうなのめっちゃいい・・・。」


なつみ 「スカル先生は若めの先生が多いアルカレッド・フォーストの中でも上から数えたほうが早い、年長組だからね。」


みはる 「そう、イケおじなの・・・。」


ちあき 「出た、イケてるおじさん。略してイケおじ。」


ふゆか 「え、イケメンおじさんじゃないの?」


なつみ 「どっちでもいいけど、乖離の箱庭のキャラクターの時点で顔がいい。スカル先生は確か、アルカレッド・フォーストのOBじゃないんだよね。」


ふゆか 「それがどうしたの?」


なつみ 「そこがすごいんだよ。アルカレッド・フォースト魔導学校は大魔法士を養成する学校。つまり、そこの教師は大魔法士の卵に教えを説かないといけない。それが、大魔法士が大魔法士の卵に教えるならまだしも、世界唯一のアルカレッド・フォーストの出ではないってことは、スカル先生は大魔法士ではないにもかかわらず大魔法士に物事を教えられるくらいの知識人ってこと。」


ふゆか 「はぁ~!なるほどね。」


なつみ 「魔法生物に関する研究が認められてアルカレッド・フォーストに呼ばれたんだよね?」


ふゆか 「うん・・・。世界中旅してそこでたくさん研究して、たくさんの部下や弟子が世界中にいて・・・。人生経験豊富オジサマ好き・・・。あと、世話焼き先生なのもいいね・・・。」


ふゆか 「世話焼きだから慕われて、たくさん部下や弟子がいるんだね。」


なつみ 「スカル先生の面倒見の良さはそれだけじゃないよ。自身の担当である魔法生物学は積極的に補習、講習会、勉強会とか開いて、苦手な人も逆にもっと進んでいろんなことを学びたい人にも学べる場を設けてるんだって。あと、自分の担当以外でも教えられるものなら聞いたら教えてくれるの。」


みはる 「それ・・・!本当に先生の鑑・・・。」


ちあき 「そんな先生この学校にもほしいわ。」


ふゆか 「あ~、なっちゃんの嫌いなハズレの先生が多く集うからね。」


なつみ 「違うよ。この学校にはハズレの先生が集うじゃなくて、やってきた先生に腐ったミカンの如くクソがうつっていくの!多いとかいう問題じゃなくて、どんどん浸食されてくんだから、根絶しないと収まらん。」


ふゆか 「それもそうね。」


みはる 「それでね、生物系の先生ってのも個人的に好きです・・・。あと、魔道具良い・・・。」


なつみ 「テラリウムね。気に入ったものは人でも物でもなんでも小さくしてテラリウムに大切に仕舞っちゃうっていう謎の個性。」


みはる 「私もテラリウムに仕舞われたい・・・。」


ふゆか 「それが気に入られている証拠だもんな。」


みはる 「スカル先生が作ったテラリウムなんて桃源郷でしかないよ・・・。」


ちあき 「結局ほとんどなっちゃんが説明してみはるはまともに話してないじゃん。」


なつみ 「今のみはるにはこれが限界なんだ。見てごらんよ、みはるの状態を。あたしは限界以上のものは求めないよ。」


ちあき 「まぁ、推しの尊さにいっぱいいっぱいか・・・。」


みはる 「人に話すことによって思考が整理されて余計無理ぃ・・・。」


ふゆか 「でも一言でまとめてもらうよ。」


みはる 「・・・。」



みはる、困ったように沈黙する。



みはる「・・・。」



みはる、ものすごく考えて焦りだしている様子が傍から見てもわかるようになる。目線が泳ぎだす。



みはる 「・・・。・・・お、推しぃ・・・!!」


ふゆか 「まぁ、そりゃそうだろうな。“推し”プレゼン大会だし。」


ちあき 「大丈夫、気持ちはしっかり伝わったし、共感できる。」


なつみ 「これがサシでやってたら「甘ったれるな」ってやり直させてたわ。」


ふゆか 「手厳しい。」



みはる、そろそろと教壇から降りる。

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