第6話 もお君の……とっても大きく成長してるね……。

 

「ほら、背中流してあげるから、正面向いててね」


 ……思わぬ事態になってしまった。

 とりあえず俺は手で腰の部分を隠して、そばにいる詩織に背中を向ける。


 詩織はバスタオルを体に巻いただけの姿で、俺の背後にしゃがみ、ボディーソープに手を掛ける。


 プシュプシュと、プシュプシュと、詩織の手に溜まるボディーソープ。

 詩織はそれを手で揉んで泡だてて、俺の背中を洗おうとしてくれていた。


 一応、俺は体をすでに洗い終わっているけど、それでも洗ってくれるそうだった。


 だけど、


「……やっぱりだめだと思う」


「う、う〜ん。私もそうは思ったけど……小さい頃はよくこんな風に入ってたから、今更、気にする方が変な気もしてくるし……」


「それは……ないとは言い切れないけど」


「だよね」


 確か、小学校高学年ぐらいまで、一緒に風呂に入っていた覚えがある……。

 詩織の家は親が忙しかったから、夜はうちで過ごして、その時に一緒に入っていたのだ。


「だからほら、せっかくだし、私が背中洗ってあげるねっ」


 そう言うや、ゴシゴシと俺の背中を洗い始めてくれた詩織。

 首の付け根から臀部の部分まで。

 ゴシゴシゴシゴシ、と甲斐甲斐しく俺の背中を洗ってくれる。


「どう、気持ちい?」


「うん……。めっちゃ気持ちいい」


「えへへっ。なら、よかった」


 チラッと見てみると、顔を赤くした詩織の微笑む顔があった。


 本当に気持ちいし……なんだろう、幸せな気分になってくる……。


 もちろん、恥ずかしい。同じ年頃の女子に裸を見られているんだ。腰の前の部分とか絶対に見せられない。

 でも、詩織は俺が欲しいところに刺激をくれて、コンスタントに、そこを擦り上げてくれるのだ。


「昔、よくこんな風に洗ったから、もお君がやってほしいとこ、全部分かるの」


「あ……そうか」


 確かに、いつもこんな風に洗ってくれていた。


「とりあえず……背中が終わったら、頭もやって……、これぐらいでいいかな?」


「う、うん。ありがとう……」


「うんっ。じゃあ泡、流すから目を瞑っててね」


 詩織は背中の後も、俺の頭を洗い直してくれて、シャワーで泡を流してくれた。

 シャンプーの落とし忘れがないように、手櫛でしっかりと。


 その手つきもなんだか懐かしい指使いで、気持ちよかった。


「じゃあ綺麗になったし、お湯に浸かって温まっててね」


「う、うん……」


 俺は浴槽の蓋を開けて、お湯に身を鎮めることにした。


「じゃあ私も体洗おっと」


 再びボディーソープを泡だてて、今度は自分の体を洗い始める詩織。

 風呂に入る前に髪を結んだようで、今の詩織の髪は後ろで結ぶお団子の髪型になっている。


 首も、肩も、うなじも、耳も見えて、全体的に詩織の白い肌がほんのりと赤みを帯びているのが見て取れた。


「……そんなに見られると、洗いづらいんですけどぉ……」


「あ、ご、ごめん」


 俺はサッと目を逸らして、顔を背けた。


「ふふっ」


 微かに笑う声が風呂場に小さく広がっていた。


 そして、ごしごしと洗う音が耳に入ってくる。時折、小さく声が漏れる音も聞こえてきて、なんだか自分の心臓の音がやけにうるさく聞こえる気がした。


「せっかくだし、髪まで洗お……」


 天井から水滴が落ちてきて、ぽちゃんという音とともに湯船の水面に波紋が広がっていた。



 * * * * * *



「じゃあ、お邪魔します」


「……お、俺は出るって」


「いいのっ」


 俺がいる浴槽の中に詩織がそのまま入ってくる。

 うちの浴槽は小さめだ。だから二人で入るには少し窮屈なのに、それでも詩織は気にすることなく入ってくる。


 詩織の体にはバスタオル一枚。体を洗うときは途中で外したようだけど、また巻き直したらしく、そのバスタオルは水で濡れて、詩織の体にピッタリと張り付いていた。


 体のラインもくっきりで、バスタオルの生地も薄く、肌の色が透けて見えている。


 そんな詩織がゆっくりと、こっちを見ながらお湯の中に腰を下ろそうとした……その時だった。


「う”っ!?」


「あ、ごめん!」


 むにゅり、と、俺の下半身の大事な部分に、蹴りが入った。

 どうやら、足を伸ばそうとした詩織が足の位置を調整しようとしたところ、お湯の中に沈んでいた俺の股間を踏み抜いてしまったみたいだった。


「なんか、ものすごく、硬くなってた……」


「……っ”」


 ……し、死にたい。


「それにしても、もお君……とっても大きく成長したね……」


 ……それは一体どこのことを言っているのだろうか。


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