【エッセイ】あなたはもう、付喪神に愛されるのですか?

幻中六花

1日かけて選んだ食器

 先日、大切に使っていた茶碗が割れてしまった。

 2020年に入り、私は持っていた大量の食器を全て手放し、


『こだわりの食器を少量だけ持とう』


というミニマリズムな思考のもと、主人と共に栃木県へ向かった。


 世間は新型コロナウイルスが猛威を振るっていて、春に出された緊急事態宣言が解けてしばらく経った、10月のことだった。


 その頃の東京都での新規感染者数は一日だいたい100人台。

 私達が向かった栃木県でも、どの店も感染予防対策に抜かりはなかったし、私達もお店に入る度、出る度にアルコールで手指を消毒した。


 今まででは考えられない、緊張に満ちた小旅行だった。


 向かった先は栃木県の藍の道。益子焼の瀬戸物屋さんがズラリと並ぶ道だ。

 何十件も益子焼の陶器を扱う風情あるお店が軒を連ねていて、一度歩いただけでは全ての食器を揃えることができなかった。


「あっちのお店のあれがいい」

「こっちのお店の方がよかった」

と言いながら、私達は楽しく食器を揃えていく。


 最低限必要な食器は書き出してあったので、それを見ながら揃えていくと、1人分で7〜8種類になった。

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