5.VS【戦刀の令嬢】刃毀崎 閃華

「では作戦開始! 検討を祈る!」


 深夜1時、作戦開始ッ! ニシタマ地区、廃工業跡地! 護送トレーラーから降りた旭日代行サービスの職員たちは、各々の標的ターゲットを目指して散開した!


「じゃ、アタシたちも行きますか~」


 メタルヨロイとエグゼキューターは二人一組ツーマンセルで行動する。いつもの流れだ。


コイツエグゼキューターが無茶苦茶するせいで、誰も組もうとしないんだよな……。だから俺がいつも面倒を見るハメになる……)


 などと考えながら、メタルヨロイはのっしのっしとニシタマ・大ホール目指して進んだ。その肩にはちょこんとエグゼキューターが腰かけて、しきりにキーボード叩きながら周囲の索敵をしている。


 そうして五分ほど何事もなく歩いていると――ニシタマヴィレッジ役場前交差点で突然の殺気ッッッ!! 見渡せば、赤く点滅する信号の上に直立する物陰ひとつッッ!!


「オーッホッホッホッホッホッ! 来たわ来ました来ましたわ! バカが雁首がんくび揃えてノコノコやって来ましたわーーーーッッッ!!」


 純金のドレス、全身から湧き上がる不遜ふそんのオーラ!! 光輝、だがそれでいて粗野ッ! ダブルドリルの金髪が夜風になびくと空中にその身を翻し、音もなく地に降り立った……! なんという柔らかい身のこなしか!?


「高貴にして無双の剣客――刃毀崎はこぼれざき閃華せんか、降臨ッ! みなさま以後お見知りおきを!」


『あ、あの女……!』


「だね。社長の手配リストに載ってたテロリストだ」


 刃毀崎はこぼれざき閃華せんか――抹殺商会の主要株主にして、戦刀の令嬢という二つ名をほしいままにする生粋の戦闘狂! 彼女はあの恐るべき刃毀崎自治区はこぼれざきじちくの時期区長筆頭候補なのだ……! 


 刃毀崎はこぼれざき自治区! それは災魂さいたま県の僻地にあり、住民全員が帯刀している弱肉強食の地! 区長の座を巡って常に紛争が起きているヤバイ地域である……!

 そんな蛮族の地で頂点に立つ実力を彼女は有しているのだ! 怖い!! 


「オホホホホ!! アナタ達、お話は伺っておりましてよ! 本日の株主総会を邪魔しに来たのでしょう!?」


『ど、どうしてそれを!? まさか内部から情報が漏れているのか!?』


「総理大臣から電話で直々に宣戦布告されましたけど……」


『総理大臣ンンン!!』


 バカか!? この国の総理大臣はバカなのか!?


「宣戦布告とあっては謹んで受けるのがワタシの流儀ッ! 抹殺商会の新兵器、科学妖刀「アルケミー」で力を試させていただきましょう!」


 刃毀崎はこぼれざき閃華せんか、抜刀ッ! 空を斬る音が残響し、メタルヨロイは思わず息を呑んだ……!


「素晴らしい振り心地ですわ! さすが巨額の資金を提供しただけあっていい仕事ぶりですわ!」


 両手で強く柄を握りしめ、水平に剣を構える独特の構え!! 凄まじい剣圧の切っ先が向かうのは――メタルヨロイである!!


「斬鉄剣――今のワタシなら成し遂げられるはずですわッッ!!」


『ひ、ひい……コイツ、正気じゃない!』


 メタルヨロイは後ずさろうとしたが、エグゼキューターの言葉が彼を踏み留まらせる!


「アタシの作った最強の装甲ヨロイが、テロリスト共の量産品なんかに負けるわけないでしょ!?」


『エグゼキューター……!』


「自分を信じろ! メタルヨロイ!」


「茶番はそこまでになさい! 死になさい! 刃毀崎はこぼれざき流惨殺奥義、一切合切諸行無常斬ですわーーーーーッッ!!」


 刃毀崎はこぼれざき閃華せんか、狂った構えで体操選手の如く全身を回転させながらメタルヨロイへと迫るッ! 対してメタルヨロイは巨大な拳で振り上げる!

 そして妖刀の切先が、メタルヨロイの拳と激突しようとしたその瞬間ッッ!!


「げぶァァァァァァァッッッですわァァァァァァァッッッ!!!!」


 刃毀崎はこぼれざき閃華せんかの肉体めがけて、軽ガトリング砲の弾丸が命中ッッ!! DRRRRRRRRRRR! 一秒間に百二十×二ヒットッッッ!!!! 刃毀崎はこぼれざき閃華せんかは空中で不自然な体制のまま固まって地面に墜落し、意識を失った……!!


「アッハッハッハーー!! ちょろいもんだね!」


 後には茫然と立ち尽くすメタルヨロイと、満足げに軽ガトリング砲を小脇に抱え直すエグゼキューターの姿があったッッ!!


「? なにか?」


『いや……お前、そういうところあるよな~と思って』


「勝てばいいんだよ勝てば。テロリスト相手に卑怯もクソもないでしょ? 一対一の勝負だなんて最初から誰も言ってないし装甲ヨロイ直すの面倒くさいしお金もかかるし。馬鹿正直に真正面から襲ってくる方が悪いんだよ」


 そう言っている間にも、彼女は刃毀崎はこぼれざき閃華せんかの手首足首にしっかりとオルハリコンファイバー製の拘束具を巻き付けたのだった。


「さ、次行こう次。急がないと総会が始まっちゃうよ!」


『お前だけは敵にしたくないよ、俺は……』


 ともあれ――抹殺商会 主要株主、刃毀崎はこぼれざき閃華せんか、撃破完了ッッ!


 株主総会の阻止まで、残り五人。


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