ラッキーガールっぽい少女

「見て、これ」

 高校の教室でクラスメートのくるみが、僕に1枚の1万円札を示した。


「右下をよ~くごらん」

 くるみがさらに見るべき場所を人差し指で示す。そこを凝視すると、お札の記番号「CA888888X」があった。


「番号が全部揃っている」

「でしょ。このお札、質屋に入れたら1万円以上で引き取ってもらえるかな」

 くるみは大胆なアイデアを口にした。

「多分、そうしてくれると思うね」

 僕は苦笑いしながら彼女に同調した。


「やっぱり私って幸運♪」

 くるみは小躍りしながら自分の席へ戻っていく。


---


 その翌日だった。

「この記番号を見て」

 くるみが再び1万円札を見せてきた。

「TK202020O」

「そう、2020年東京オリンピックを連想させるみたいでスゴいでしょう?」

 くるみは自分の幸運を自画自賛するように、スキップしながら教室を出た。

 僕はこんなにお札でラッキーになれることがあるのかなと、不思議に思った。


---


 さらに翌日。

「この記番号を見て」

「CQ777777A?」

「そう、またゾロ目よ」

 くるみは再びラッキーな記番号を見せ、僕のもとから去る。


 僕はここまで来ると、ちょっと細工めいたものを感じていた。


 スキップしながら教室を出るくるみの背中を見ながら「こんな展開、長くは続かないだろう。何なら今日で最後かな?」と思った。


 実際に翌日以降、彼女は教室で見なくなった。

 

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