第9話

「司、起きていますか!?」

「・・・・・・おはよう、レスト」

司は目を覚ました。

「早く準備をして下さい! ヨークの村が魔物に襲われました!」

「何だって!?」


司は慌てて着替えを済ませ、昨日ミクルからもらった装備を身にまとった。

外に出ると、丁度ミクルも装備を身にまとって部屋から出てきた所だった。

「司、女王様と王様の所へ行くわよ!」

「ああ!」


司はミクルの後について走って行った。

大広間に着くと、すでに女王と王が立って待っていた。

そこにユーリも現れた。


「ミクル、ユーリ、そして・・・・・・司でしたか?」

女王が言った。

「はい、初めまして」

司はお辞儀をした。

「挨拶は今は良い。ヨークの村に現れた魔物達を討伐して欲しい」

王はそう言うと、深いため息をついた。


「はい、すぐに!」

ユーリが答える。

「馬車が用意してあります。3人でヨークの村に向かって下さい」

レストはそう言って、外に出る扉を指さした。

ミクル達3人は頷くと、外に駆けだしていった。


ミクルと司が馬車に乗ると、ユーリが馬に跨がった。

「ユーリさん、馬車を動かせるんですね」

「はい。今は一刻の猶予もありません、飛ばします」

ユーリはそう言うと、手綱を引いた。

馬車が勢いよく駆け出す。


「ヨークの村は、ユーリの故郷なの」

ミクルが言った。

司は頷いた。

「私の村みたいになったら、どうしよう・・・・・・」

ミクルは少し震えている。

「大丈夫だ、ミクル。落ち着け」

司は言った。


「着きました! ヨークの村です!」

ユーリはそう言うと、馬を下りた。

司とミクルも馬車を降りた。

辺りには、ゴブリンの群れが居た。


村人たちが襲われている。

ユーリは剣を構えた。

司も構えて、ユーリに素早さUPの魔法と剛力の魔法をかける。

「あれ? 体に力がみなぎります!」


ユーリが不思議そうに言うと、ミクルが得意げに答えた。

「司の補助魔法よ! 強いんだから!」

司は何も言わず、ミクルにも魔術UPと素早さUPの魔法をかけた。


そこで、司は力尽きた。

「後はまかせたぞ!」

「ええ! 司は少し休んでなさい!」

ミクルとユーリはゴブリンの群れをなぎ倒していった。


最後に残った、ゴブリンリーダーは強かった。

しかし、ミクルの魔法とユーリの剣技であっさりと倒れてしまった。

「凄い! いつもよりもずっと強くなっている!!」

ユーリは剣を振りながら、驚いていた。


「そうでしょう!? 司は優秀な補助魔法員なのよ」

ミクルは自分の手柄のように言う。

司も立ち上がれる位に回復した。


司が立ち上がり、辺りを見回すと怪我人はいたものの、亡くなった人は居なかったようだ。「よかった・・・・・・。間に合ったんだ」

司は1人呟いた。


そのとき、30代位に見える男性が現れた。

「あなたたち、勇者?」

「え!?」

振り向きざまに、ミクルが殴られた。

ミクルはなぎ倒された。


「何をする!? 貴様は誰だ!?」

ユーリが切っ先を男に向けた。

「私はレイ・サンドル。 魔王の使いだ」


「その男、異常な魔力を感じる」

そう言って、レイは司を見つめた。

「お前がこの村を襲ったのか?」

司が言った。


「今日は引き上げます。 またお目にかかるでしょう」

レイはそう言うと、マントをバサリとかぶり消えてしまった。

「なに、今の?」

ミクルは打たれた頬を撫でながら、立ち上がった。

ユーリが言った。

「大丈夫? ミクル?」

「ええ、大丈夫よ」


「司ももう大丈夫?」

ミクルの問いかけに司が答える。

「ああ、俺は大丈夫だ」


「ちょっと、家の様子を見てきて良いかい?」

ユーリはそう言って、村の中に消えた。

「司、アンタ強くなってよね」

「ミクル、そんなことを言われても、勇者ほど強くは成れないんじゃないか?」

司は俯いて答えた。


「アンタのその性格が問題なのよ!?」

ミクルが怒鳴った。

「ミクル、冷静になれ。 俺は勇者の育成係であって、勇者ではない」

司が冷たく言い放った。


「じゃあ、アンタ私たちを育てなさいよ。育成係でしょ!?」

ミクルは腰に手を当てて言った。

「ああ、最善は尽くすつもりだ」

司もミクルを見据えて言った。


「戻りました。 家も皆も無事でした」

ユーリが戻ってきた。


3人はシラヌイの街に戻っていった。

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