11-3


「よし、これでまだいけるぞ……『ジャンク組成ダー』!」


 技の名前を叫ぶと、オレの背中にロケットブースターが作り出される。半分の力しかないせいで、いつも以上につぎはぎで配線見えまくり。だけど神の力が使えるだけで十分だ。


「ロケット点火――発射ぁっ!」


 ボゥッ、ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 背中のブースターから、すごい勢いで火と煙が吹き出る。オレの体は打ち上げられて、巨人のヒュウマさんに一直線に飛んでいく。


「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!」


 オレがヒュウマさんを止める。

 人間滅亡なんて、オレがやめさせるんだ!

 と思ったところで、


 ぺしっ。


「ぶべらぁあああああああああああっ!?」


 巨人サイズのはたき落としが炸裂した。

 ――どかぁんっ!

 オレは地面に叩きつけられてしまう。背中のブースターはグシャグシャ、ひしゃげて使い物にならなくなってしまった。


『お、早かったのぅ』

「……ムリムリムリ。半分の力じゃ、絶対足りないって」

『そりゃそうじゃ』


 土まみれで何とか這い上がるオレ。幸い大ケガにはならなかったけど、普通に死にそうな攻撃だったんですけど。

 神の力がもうちょっとあれば、こんなことにならなかった……いや、もう半分もらっても変わらないか。だって今までずっと、ヒュウマさんには手も足も出なかったんだから。新しい神様になったヒュウマさん……影の巨人なんかにかないっこない。


「ああ、もう諦めて滅びるしかないのか……」


 神の力を使っても、ヒュウマさんを止められない。オレ達にはもう、なす術がないんだ。


「何言っているのよ、カイタ……」


 そんなオレの胸ぐらを掴むのは、メブキさんだ。


「だ、だって……」

「だってもヘチマもないわよ!あなたが諦めたら、あたし達全員おしまいなのよ!?」

「でも、オレとヒュウマさんじゃ、力の差があり過ぎなんだもん……」

「見れば分かるわよ!でも戦えるのは、もう……あんたしかいないの。そこの神様は役に立たないし!」

『え、ワシのこと?』

「そうに決まってるでしょ!?」


 メブキさんは信じているんだ、まだ滅びを止められるんだって。だから「諦めるな」って言っているんだ。


「あたしだって、戦い嫌いで甘ちゃんな、弱々カイタになんて任せなくないわ」

「そうだよね……って、オイ」

「でも、今はあなただけが頼りなの。だから、諦めないで」


 そうだ。もうオレしかいないんだ。

 オレが止めないと、人間は滅びてしまう。物作りの未来どころか、人と関わる全てがなくなってしまう。

 勝ち目はないかもしれない。でも、決して諦めちゃいけない。自分の思いを曲げちゃいけない。

 最後まで、全力を尽くすんだ。


「ああ、そうだな。オレはまだ、諦めたりなんか……絶対しない」


 その時。


 オレの虹色のオーラが、足元から噴き出してきた。それに共鳴しているみたいに、メブキさんの体からも緑色のオーラが溢れてくる。


「こ、これは……」

「あたしにも、まだ力が……?」


 メブキさんのオーラが、どんどんオレの中に流れ込んでくる。


「どうやら、絶滅するにはまだ早いってことだね」

「さすがカイタ。ずっと戦いを止めようと頑張っただけあるな!」


 カンブさんからはオレンジ色のオーラが。

 ギンガからは白いオーラが。

 無から溢れ出して、オレのオーラに混ざり合っていく。


「おにーさん、サラの分もお願いっ!」

 サラちゃんからは、赤いオーラが。


「ユーの思いに、ワタシも賛成だネ」

 ピーシィさんからは、灰色のオーラが。


「このまま滅ぶなんて、わたくしも嫌ですわ」

 サイさんからは、黄色のオーラが。


「ボクもまだ、諦めたくない」

 シズクさんからは、青いオーラが。


「お、男に協力するなんて、今回が特別だからねっ!」

 ミクさんからは、黒いオーラが。


『これは、人の思いが……神の力を生み出しておるのか……!?』


 たくさんの、色んな色のオーラが、オレの中に集まってくる。

 全然違う思いで戦ってきた、神様候補のオーラ。だけど今は、滅びを願うヒュウマさんを止めるために、気持ちを一つにしているんだ。


「みんな、ありがとう……!」


 オレの虹色のオーラが、ギラギラと輝きを増している。ヒュウマさんの紫色のオーラにも負けないくらい、巨大な揺らめくオーラだ。


「『ジャンク組成ダー・レインボー』!」


 みんなの力を使って、オレは新しい装備を作る。背中にで組み立てられるのは、虹色に光るロケットブースター。つぎはぎなんかじゃない、超高品質でピカピカの装備だ!


「じゃあ……行ってくる!」


 オレはロケットブースターを点火。

 みんなに一時ひとときの別れを告げて、ヒュウマさんの眼前へと向かう。

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