第14話 挑戦③

「ここね…………」

 四人はすんなりと目的の深さまで到達する。

「ここからなの?目印も何も無いけど良く分かるね?」

「ああ、アンタはこの深さまで来るのは初めてだったわね。ここじゃまだ分かりにくいかもしれないけどいくらか進めば分かるわよ」

 しばらく歩くとアネモネも変化に気付いた。

「なんだか明るい!」

 坑道の壁や天井、地面に散りばめられている魔石の粒の光が強まり坑道をより明るく照らしていた。

 そしてそれは魔石の純度が上がったという事を示しておりそれと共に魔物の脅威も上がるという訳だった。

「ここからは僕が先頭に行くよ」

「気を引き締めて行きましょう。私は殿を務めます」

「アネモネ、アンタはアタシから離れるんじゃないわよ?」

「う、うん……」

 今までは配列や役割は厳密には決めて居らず状況に応じて採掘や戦闘と周囲の警戒をしていたがここから先はそういう訳にはいかない。

 非戦闘要員のアネモネを中心にシェリーが魔術と獣人の感覚を活かして索敵と後衛を務めてそれをカインとリリィが守る形で配列を組む。

 四人は緊張した面持ちで坑道の奥へと進んだ。

「アネモネ、魔石が有った。採掘を頼むよ」

「はいは〜い」

 先頭を行くカインが魔石を見つけアネモネがそれを採掘する。

「まだ魔物は来ないね?」

 つるはしを振るいながらアネモネは言う。

 既に幾度と魔石を採掘しているが幸運にも魔物と遭遇する事は無かった。

「来なくて良いわよ」

 アネモネの背負う袋には既に魔物を引き寄せるのに充分な量の魔石が集まっている。

「もし戦闘になれば音や気配に引き寄せられてさらに集まって来ます。可能な限り戦闘は迅速に終わらせましょう」

「大丈夫、今はあの時とは違うさ」

 魔石を採掘して四人はカインを先頭に再び坑道を進んで行く。

 しばらく進んだところでシェリーが魔物の気配を察知した。

「止まって。……………………前の方から……何体か居るわね」

 シェリーにしか聞こえない程小さい音だが曲がっている坑道の先から魔物の足音が聞こえて来ていた。

「すぐに倒せばそれだけ他の魔物が来る可能性も低くなるしこっちから攻めよう」

「そうね」

「分かりました」

 カインの提案にシェリーとリリィは二つ返事で了承する。

「アネモネはシェリーと離れないでいてね」

「うん。分かった。無理しちゃダメだよ?」

 そしてシェリー以外の耳にも魔物の足音が聞こえてくる程に迫り魔物との戦いが始まった。

「予想以上にあっさり終わったわね」

 しかしそれは僅かな時間で終わる。

 魔物達は奇襲を受けてロクな反撃をする間も無く全滅した。

「何だか手強い気もするけど今まで倒して来た魔物と同じだしね」

「アネモネ、この辺りは魔石が多いみたいだから採掘しておいて頂戴。近くに魔物は居ないみたいよ」

「任せてー!」

 アネモネは意気揚々とつるはしを構えて採掘を始める。

「シェリーちゃんは獣人なだけあって流石だね。魔物さんが近づいて来るの分かっちゃうんだもん」

 アネモネが魔石を採掘しながら言う。

「そうですね。この街に来るまでの道のりでもそれで何度も魔物をやり過ごせましたしシェリーさんが居なかったらどうなってた事か」

「そんな便利なもんじゃないわよ。かなり集中しなきゃ分からないから戦ってたりして他に気を取られてたり疲れたりしてると普通の人間と変わらないもの。血の濃い獣人が羨ましいわ」

 シェリーは憂いた表情を浮かべる。

 同じ獣人でも身体の半分以上が獣の獣人であればシェリーが集中した時とは比べものにならない程に鋭敏な感覚を常に備え、更には優れた筋力や瞬発力まで備えている。

 鋭敏過ぎる感覚等が仇になる事はあるが利点の方が多く、シェリーの様な獣人が嫉妬と羨望を向けるのは致し方無い事だった。

「それでも僕等には出来ない事だから頼りにしてるさ」

「いつも感謝してますよ?」

「ありがとー!シェリーちゃんすごい!」

「う、うっさいわね!さっさと魔石を採掘しなさい!ほらっ!カインとリリィは周囲を警戒する!」

 褒めちぎられたシェリーはニヤけない様に耐えつつパタパタと音を立てる自らの尻尾を押さえながら照れ隠しに叫ぶ。

 無事に魔物を倒せた事も有り、適度に肩の力が抜けた四人は更に魔石を得ようと坑道の奥へと進む。

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