鈍色

この数日、どんな景色を見たんだったかなと考えても、窓から覗いた太陽の隠れた空くらいしか探し出せない。


今日も窓を開けると、水分を摂りすぎた風がたぷんたぷんと気だるそうに、微かな潮の匂いを届けてくれたのだけれど、あいにく今は何も言葉にする気分じゃなくてね……


と、声にする代わりに窓を閉めた。


何もかもが濡れているかのような景色が拡がっているのに、ぼくが発する言葉はたぶん、ギスギスと渇ききっているのだろうな。


言葉を放ったその先に君がいたのなら、知らずと傷つけてしまったかも。



声を可視化して、空の下に差し出したなら、


雨に打たれて多少は言葉も潤うのかな。


そんな言葉を君に投げることができたなら、


きっと君は、返してくれるのだろうね。



そう想うことで

なんとか均衡が保てた気がした



今のぼくの


にびいろのこころの



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る