3. お一人様

怪人エモーションだ!


人間というのは、やはりよく分からない。

人間の生態を調べる実験は今日も続く。



不思議な言葉を耳にした。

“お一人様”とは、一体なんだろうか。

“様”をつけるあたりに、よろしくない感じが見え隠れしている。そんな気もする。


わたしの生態調査によると、人目が気になり、一人だというのに、わざわざ二人分ずつ買うようにしているという者がいた。

タピオカを二つ…

ケーキを二つ…

歩いていても、家に帰っても、“一人”なのにだ!

怪人としては、この人間の行動は実に奇妙だ。


いいか、そもそも人間は一人だ。死ぬまでずっと一人なのだ。

それは怪人も同じ。永遠に一人なのだ。


人目を気にして一人でラーメンを食べられない者は人生一つ損している。

諦めたその店のラーメンが美味しかったらどうするのだ?

出会いを一つ捨てていることになるぞ。


しかし、それでも一人ではどこにも行けないという人間よ、怪人がいいことを教えてやろう。

いいか、本格的なカメラを持って行け!!!


カメラさえ持てば、人間はどこへでも一人で行くことができる。

カメラを極めるための行動だと、世間様に猛アピールをするのだ。

これは男女問わず効果を発揮するだろう。

いいか、カメラマンは全人類に尊敬される。

そして、女であってもカメラウーマンではなく、カメラマンと呼ばれる。

その平等さが、わたしは心地よい。


ファミリーじゃなくても、ファミリーレストランにだって行けるのだ。

ん?ファミレスにカメラ、おかしいと思われるだと?

そんな言葉は一切受け付けないぞ!

どこかへ出かけた帰りのファミリーレストランだという顔をしていればいい。

カメラを極めた後の食事だ。何ら問題はない。



しかし、写真というものに、わたしは物申したい。

ある二つの写真があった。

“偶然撮れた奇跡の一瞬”と、カメラを構えれば“誰でも同じものが撮れる絶景”と、一体どちらが評価されただろうか?


わたしの生態調査によると、ある大学内の写真コンテストで一位に選ばれたのは、なんと誰でも撮れる絶景の方だった。

奇跡の瞬間には、残念なほど票が入らなかったらしい。

その二つの写真。実は撮ったのは同じ人物だった。

自分の想いとは裏腹に、違う形で一位になり、表彰されたそうだ。

しかし、この結果に絶望を感じたそいつは、それをきっかけに写真への情熱を少し失った。

誰でも撮れるドアノブの写真を、モノクロにして撮っている写真部にも入らなかったそうだ。

クソッ!“偶然撮れた奇跡の一瞬”で、一位になりたかったのに!!!



話が脱線した。

お一人様を気にする人間よ、誰の様子を気にしている?

教えてくれ!地球という大きな水槽に飼われている愚かな人間よ。


お一人様の言動と、それを見守るお二人様以上の人々。

その感情に名前をつけたなら、それはなんと呼ぶのだろう。

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