自分の体に急に他にも吸血鬼化の現象が起こったらどうしよう……知らない人の母乳が飲みたい…とか……と思いながらも徒歩5分の通学路を歩いているとおじいさんから話しかけられた。

「すいませんな…県立…稲毛高校じゃったかの?すぐ近くらしいんじゃがどこにあるか教えてくれませんかの」

どことなく見たことがある気がする。親戚に一人絶対いるんだけど思い出せない、そんな感じだ。

「あ、俺生徒なんで、一緒に行きましょうか?」

この先見通しの悪いカーブとの目につきにくいところに途中道があってうちの学校に着く。地図だとぐるっとまわってしまっているように見えるが斜めに切れている道路があるのだ。

学校へは目と鼻の先だ。

「そうさせていただきますか」

おじいさんの顔をもう一度誰ににてるか思い出そうと、横目で見て気付いた。

このおじいさん、瞳が赤い…!


老化によるシワで瞳がかなりみえずらくなっているのでパッとは気づかなかったが……自分以外に赤い瞳の人をはじめて見たので、動悸が高まり、なにか気の利いたことも言えなくなってしまった。

(意外とやっぱり…赤い目っていうのはインパクトあるもんだな)

おじいさんと学校へつくと、そのままおじいさんはひょいっと校門をくぐった。

「おじいさん…ついたけど…入っちゃっていいのか?」

なんと言ったらいいのかわからず不自然に質問するとおじいさんは目を見開いてこっちを見た。

あの、赤い瞳をみたら体がすくんだ気がした。

「校長室に用事じゃ、余信夜もこい」

「は?なぜ俺の名前を!?」

びっくりしながらあわてておじいさんについていくと、校舎の中を悠々と歩き、校長室にたどりつく。

ノックをすることもなく、勝手に中に入っていく。

「ちょっ…」

手招きされて余信夜も入る。

暗い室内におじいさんは明かりを半分だけつけた。

「わしは夜彦というんじゃ余信夜。さすがに忘れているか」

「あっ…え!?」

確か夜彦は…

「お…じいちゃ…!?生きてたの!?」

びっくりするがもともと記憶がないので、とりあえず固まった。

おじいちゃんだと!?


「話しが長くなりそうだ、一時限目の始まり頃には消える」

夜彦こと余信夜の祖父はゆったりと校長室の椅子に座った。

「じいちゃ…ん…!って俺…顔をおぼえてもいないんだが…」

「わしは実はお前の母、巫妹(みまい)からごくごくたまに手紙をもらっていた。こどもの頃死にかけてた余信夜と朝天造が元気に生きている写真を見て、とにかくうれしかったものだ。一方的に申し訳ないが、住む場所をしょっちゅう変えているのでそうそう連絡は取れんのじゃ。わしは死んだことになっているしな」

射躯羽は俺を祖父ににてると言っていた。自分でも言われてわかる、たしかに肉親の顔をしていた。

気持ちが高まり「おじいちゃん!」と話しかける。

はじめて祖父にしっかりと呼びかけた言葉だ。

夜彦はコクリと首を下げて少しだけ笑ったがすぐに眉間にシワを寄せた。

「お前らに血を打ったのは仕方のないことだった。そうでないと朝天造は確実に死んでいたんじゃ…許せ、本当はこの力はもう世代を超えて引き継ぎたくはなかった」


朝天造が死ななかったなら、それだけでじいちゃんの判断は正しい、絶対にそう思った。

しかし夜彦の顔は暗かった。

「できれば自分の代でこの血は終わらせたかった……しかし、無理じゃった」

夜彦は話を続ける。

「体を変身するほどではないが大きさを変えられて、細いところにも入れた。なので神出鬼没とはいわれていた。不死ではないが細かい傷などはすぐ治った。この赤い目で睨むと相手は少し動けなくなる。「血」を欲するのは最初の一回だけなので、もう「吸血鬼」ではないかもしれないし、細かいことはよくわからないのが実態だ。ただ、血を飲めば余信夜はいつでもいつもより力を発揮できるかもしれない」

黙って祖父の言うことを聞く。

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