今日は消化しにくい水曜ど真ん中の祝日。

おまけに雨がしとしと降っているので誰にも遊びに誘われなかった。


ん?お前?6月には祝日なんかない、そう思ったな!?

なんとあるんです〜!?千葉には「千葉県民の日」6月も真ん中、15日、のび太もあんなに嫌がってた6月の祝日問題、千葉に引っ越して来れば良かったのになぁ!しっかり公立学校も休みだ。


時間は10時、とっくに目はさめてはいるが流石にそろそろベッドから降りよう。朝食は何だろう?

ドアを開けると隣のドアもあいた。隣の部屋はドアが隣り合っていて、開きが逆なので顔をもろにあわせる結果となる。

「お兄ぃ!なんで同じタイミングで出てくんのよ!」

「それはこっちのセリフですが?」

今まで説明していなかったが、朝天造は正直かわいい。

少々生意気なツラかなと思うけど多分それは身内だからで、こうやって息がかかるほど顔が近いとドキドキするほどだ

俺と全く違う黄色に近いくりくりとした瞳をしている              

(うちの一族はどうなっているんだ)

カラコンが流行ってるから勘違いされるのがなんだか意識高いみたいで嫌だと言っていた(俺もだ)

体の方も162cmの身長にバランスのいい肉付き。俺がでかいのでよく小さくみられるが本人は女子の身長としてはやや大きい方だ。

髪の色素も薄く、そのせいで良くハーフに間違えられている。その髪は肩に付くくらいで切りそろえられ、天然パーマなのが信じられないほど綺麗にウェーブがかかっている。

ただし、やることがかわいくないことは多々ある。

朝天造は一回ひょいっと部屋に戻り、ドアを閉めた。

「あ?」顔を突き出した途端にドアが勢いよく開けられ、顔先を勢いついてかすめていく。

「朝天造!」

「ん?なぁによー?」

そこで朝天造のお腹がグーっと鳴った。

「今日の朝食は休日スペシャルパンケーキと見たね!」

俺は先にドアを飛び出した。

後ろから舌を打つ音が聞こえる。

階段を降りるところで、フフフと笑い声がする。

「遅い!」

朝天造は階段の手すりを滑り降りていた。

するりとテーブルの前の椅子に収まると、やはりいい匂いをさせていたのはスペシャルパンケーキだった。朝天造と俺はナッツを効かせたキャラメルと生クリームのものが一番好きだった。

弁当は分け合うのに家にいるときは奪い合うのかよ、と思われるかもしれないが……親の目の前で兄妹仲良く親の前ではんぶんこ、はきついお年頃なのだ。わかってくれ。

「とっぴぃ!」

一切れ目を口に運ぼうとしている朝天造に対して残念ながらもうなす術はない。

俺は仕方なくゆっくり椅子をひき、座りながら

「はいはい」

とテーブルの上を見た。

母はブルーペリーやヨーグルトをあしらったものが一番自信があるらしく、いつもキャラメルと生クリームはひとつきりだった。

今日は母親がそれを食べ、もうひとつ微妙にフルーツの違うものをテーブルの隅に置いている。

そしてもうひとつナッツとキャラメルと生クリームのものが置いてある。朝天造はひとつしかないものだと思い込み2つあることに気付かなかったようだ。

「あれ?」

「あんたらいつもケンカするんだもん」と、母。

「えー!」

これは朝天造の声だ。一口目を大きめに口に運んでもぐもぐしてるのを後悔しているようだ。

俺をじっと睨みつける。

「なんだよ」

「労せず食べるキャラメル生クリームケーキはおいしいかーい?」

「味は、一緒 !」本当に悔しかったらしい、確かに今まで俺の方が好物にありついてきたのだから。

そんなとこがちょっと愛おしい。

「次一個しかなかったときはやるからさ」

「本当!?お兄ぃ!」


「そういえば11時ごろ射躯羽さくばが娘連れてくるって言ってたの、忘れてないわよね!?」

残り少なくなったパンケーキを名残惜しそうに食べながら朝天造は

「まあお姉ちゃんに久々に会えるし、旦那さん手土産何持ってくるかなー?」と食べ物の心配だ。

「まだ食べながら手土産の心配かよ」

朝天造らしい。



射躯羽は俺たちより、6歳上の姉だ。一昨年結婚して家から出ていき、旦那に「千葉がいい」と駄々をこねて小岩に住んでいる。俺たちは稲毛に住んでいるので、そう遠くはない。旦那は埼玉生まれ埼玉育ちらしく、東京に住みたい…と主張したが、一駅違うだけで家賃が違うのを見て千葉県民になった。

それに今日は県民の日で会社が休みだ。会社も休みのところも多い。

姉は結婚してからもたびたび用事はなくてもは実家に帰って来ていた。母の料理が食べたかったのだと思う。

しかし、今回は違った。先日(とはいえ忙しかったのかもうこどもは生後3ヶ月だ)こどもが産まれたので今日はお披露目なのだ!母は産まれたときに見に行ったが俺たちははじめてだ。

こどもは女の子だというのはLINEで知っていたが、生でみるのははじめてだ。

とうとう俺にも「姪っ子」が……。おじさん、とよばれたら嫌だが女の子のなのは大いに歓迎だ!15歳くらいの違いなら将来恋愛に発展してもおかしくはないぞ!


そんなに仲がいい家族なのに、父親がいないように思えるだろうか?


父は俺たちが小学校高学年の頃、大学の研究室で倒れた。生きても死んでもいない状態だ。父の研究は金になったらしく金は豊富に残しておいてくれたし、大学側からも今でも金が出ている。不自由はしていないがやっぱり寂しい。

寝たきりは床ずれができてしまうので、専門の看護師さんをつけてはいるが、俺も気まぐれに父親の体をひっくり返しにいくことがある。


そういう時は大抵朝天造も来ていた。年子ではあるけど、俺たちはたまに双子みたいに同じことをすることがあった。男女だがこどもの頃はすごく似ており、瞳の色で見分けをつけていたという。今はさすがに似てない……と思うが瞳の色を抜いてじっくり見ると、実は結構そっくりだ。あんまり気付いている人はいなさそうだが。

それくらい瞳の色ってインパクトがあるのだ。

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