常連

最近、僕の喫茶店には常連さんが増えた。

その常連さんは今日も、両耳に可愛らしいイヤリングをしている。


「高野さん!注文お願いします!」


手を挙げながら僕に声をかけた彼女、茗花ナバナさんは、本当にあの日からお店に通ってくれるようになった。そして何度か話すなかで、珍しい彼女の名前は「茗花ナバナ 雨里アメリ」と書くと教えてくれた。


「えーっと、ナポリタンで!…あ、いや、うーん、でもやっぱり、たまごサンドにしようかな…」


少し、いやかなり優柔不断なところは、今日まで何度も見てきた。微笑ましい。


「よし!今日はふたつ食べちゃいます!うわぁ太っちゃいますねぇ~!」


嬉しそうにイタズラな笑顔を浮かべる茗花さん。少しの会話の後、僕はキッチンへ向かった。




『高野さん!』


『えっ。』


『…ふふ、今なんで名前わかったんだって顔しましたね?名札です。"高野タカノ 晃成コウセイ"さんですよね。覚えました!』




なんていつかした会話を思い出しながら、彼女のイタズラな笑顔をそこに重ねた。

あまりに突然名前を呼ぶものだから、驚いたことを覚えている。

…そして、頬を緩ませてしまったことも覚えている。


こうして僕達は、「茗花さん」「高野さん」と呼び合うことになった。

気さくな彼女の雰囲気は、このお店を明るくしてくれる。


再び緩んだ頬がバレないように、僕は心を込めてナポリタンとたまごサンドを作った。

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