第18話 姉が告白現場にやって来る シーズン2

碁点(ごてん)中学校、放課後の体育館表。

中学3年生の少女:鈴(りん)はかなり困惑していた。

なぜなら、

「好きです…付き合ってください!!」

同学年のバレー部員から告白されているからだ。


どこかで見たことのあるこのシチュエーション。

鈴はその愛らしい容姿と天然な性格で、小さい頃からモテモテなのだ。

だからよく体育館の裏や表に呼び出しを受けている。

今日は表のようだ。


そしてやはり、鈴の中でもう答えは決まっている。

「えっと…」

決まっているのだが…


「練習してる鈴ちゃんを見て、いつもかっこいいなって…でも普段は可愛くて…と、とにかく私、そんな鈴ちゃんのことが大好きなの…!!」

告白してきたのは女の子だ!!!!!!


しかも想いをストレートに伝えてくる漢気系だ!

「う、うれしい…」

と、鈴も思わず本音が出る。

「っ!鈴ちゃんが嬉しいと、私もうれしいな…///」

「友恋(ともこ)ちゃん…えへへっ」

(友恋ちゃんが嬉しいと、私もうれしい…)

などとおめでたいことを考えている鈴。

今告白されているんだぞ。


「あの…本当は想いを伝えるだけでいいやって思ってたんだけど…やっぱり無理。好きなんだもん…」

「友恋ちゃん?」

「告白の、返事を聞かせてくれる?」

「…!」

友恋は鈴と付き合いたいらしい。

鈴は戸惑いを隠せない。ついさっきまで友だちだと思っていた女の子が『付き合いたい』と言っているのだから。


ざわざわ ざわざわ


体育館の表だから野次馬も集まる。

しかし、2人の空間を邪魔する者はいない。


「えっと…」

鈴は相変わらず困惑したまま。

しかし、すでに冒頭で『えっと』と言っていた。


そう、『えっと』と言っていたのだ。


「鈴ちゃんの困った顔、初めて見た。かわいい」

「と、友恋ちゃん…?」

友恋が鈴の横髪を耳にかける。

今更だが、鈴の身長は154 cmで友恋の身長は167 cm…いい感じの身長差だ!!


ササァー…


友恋と鈴は見つめあい、そよ風だけが2人の間を通り過ぎる。


~~~♪


吹奏楽部の練習が聞こえてくる。


ルルル~♪


野次馬がBGMを入れてくる。


Oh~~dear~~


合唱部


i~mo~u~tooooOoooOo0o~~~~


ではないが独唱が聞こえる。

歌手の正体は…

「おねえちゃん!」

鈴の姉、涼(りょう)だ!!


「妹、いい雰囲気だったぞ」

その雰囲気を見事にぶち壊した張本人である。

「・・・!」

一方野次馬たちの間では、百合の間に挟まる女を許さない派と姉の登場に歓喜する派にわかれて戦争が始まった。

さらに姉の登場に歓喜する派では、姉がライバルになる派と姉が友恋とくっつく派で内戦が起きていた。

しかし、誰も自分を登場させようとはしなかった!!!!!


「えっと、鈴ちゃんのお姉さんなの…?」

「そうだよ!えへへっ」

姉が学校に不法侵入している事実に気づかない妹。

そしてうれしそうだ。

「鈴の笑顔を見るために生まれ、ここにいる」

謎のコメントをした涼は友恋に接近する。


前回告白してきた男子バスケ部員には辛辣な暴言を浴びせた涼。

今回は…


「よくも鈴をたぶらかしてくれたな。ちょっと顔がいいからって鈴がなびくと思っているのか??鈴は顔より性格重視だ(多分)。だがお前がどんなに良い性格でも鈴には刺さらない。良い性格のやつなんていくらでもいるからな。たとえこんな目立つ場所で堂々と告白できる度胸があっても、鈴がピンチのときに最善の選択ができる体力・知力・運を兼ね備えているとは思えない。どうせ『自分を犠牲にしてでも』とかいうんだろう?お前が犠牲になることを鈴が望んでいるわけがないだろう。最善の選択は『ふたりで幸せになること』に決まっている。あと鈴はかわいいだけじゃない、かわいいんだ。結論、鈴がお前と付き合って幸せになれるビジョンが見えない現実的に考えて」


今回もよくわからない理論でゴリ押した。


「……」

「友恋ちゃん?」

うつむく友恋の顔を鈴が覗き込む。

「…やっぱり、鈴ちゃんはかわいい」

「えへへっ」

「っ…」

友恋はいきなり鈴に背を向けた。

「私の告白、受け取ってもらえなさそうだね」

「?」

「でも、ずっと好きでいさせて…」

そして何かを察して、体育館の裏へ駆け出した。


「…ふーん」

「鈴、帰るよ」

「うん!おねえちゃん、会いたかったっ」

鈴は笑顔で涼の腕に抱きつく。

「ふぁい!!!!!!」

涼は驚きと感激でプロレスのレフリーのような奇声を発した。

「うぉおおおお!!!!」

告白現場を見届けた野次馬たちも唐突の姉妹百合に歓喜の声を上げた。




一瞬だけ冷めた表情をした彼女を見た者はいな買った。

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