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 それでも、僕の前を歩く時に揺れる後ろ髪も、僕をからかうときにだけ少し高くなるその声も、跳ねるように歩くせいで僕より少し広い歩幅も、全部僕の知っている彼女と変わりはない。


 僕にとって、彼女は幼なじみのミイなんだ。


「もう、いくら幼なじみだからって、いつまでも見つめられると恥ずかしいんだよ?」


 僕が腕をつかんだままでいたせいだろう。彼女は僕の顔を覗き込んだ。


「ああ、ごめん」


 言いながら僕は腕を離した。


 前に向き直ると、彼女はまた楽しそうに歩き始める。


 これ以降、彼女がつまずくことは無いので、僕は詰めていた距離を元に戻した。


「ね、さっきから私ばっかり話してる。次はりーくんの話をしてよ」


 彼女は僕に話を促す。僕は「ああ」と反応の薄い返事をした。


 彼女が一定量話し、自分の話ばかりしているのが悪いと思っているのか、単に気まずいのか、僕に話すよう促す。このやり取りは生前からだ。


 元来、よく話す彼女。元来、自分自身の事を話すのが苦手で、無口気味な僕。


 彼女の話を聞くのは自分の役割だと思い込んでいる節すらあった。けれど、僕はそれが嫌いではなかった。話しながら、時に楽しそうに、時に本当に腹を立てているように、コロコロと変わる表情が好きだった。大袈裟に身振り手振りを交えながら話す様子が好きだった。


「そうだな……」


 言いながら僕は話し始める。


 今日、友達と話した事。授業の内容。家に帰ってから何をしたか。話題というよりは報告に近い内容。どうすれば彼女のように日常を楽しそうに話せるのか僕には分からない。自分でもつまらない話だと思う。それすら、彼女は楽しそうに聞いてくれている。


 全部嘘なのに。


 無口気味で友達を作るのが苦手だった僕は、生前から彼女がいない場所での自分が周りに馴染めていないのを知ると、彼女に心配されるんじゃないかと思い、明るい方へと少し話の内容を盛るようにしていた。何食わぬ顔で彼女は聞いてくれていたけど、もしかしたら、嘘をついていた事はバレていたのかもしれない。


 それでも、半分くらいは本当だったのに。


 今は全部嘘だ。

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