十日目 クラスの人気者と一緒にデートをすることとなった。


「―か――ん」

「あ――く―!」

「朱兎くん!というわけでデートです!」

 白華がそう叫んだことによって、周囲の視線は俺達へと注がれる。

 おいやめろこっち見んな。視線がかなり痛いんだ。やめてくれ。視線によって俺が死んでしまうぞ。ていうか学校の奴がいたらどうするのだ。

 そんなわけで今俺達がいるのはアウトレットパーク。場所は―――どこだっけ。忘れた。ま、いっか。

 あと基本こういうときは〇〇財閥がなんとかかんとかとか言うのがお決まりなのだろうが、俺にはいまいち分からないので割愛。むしろ高校生であんなに語れるほうがおかしいと思うのだがそれは俺だけ?いや違う!絶対に他の人も思っているはず。


「というわけで行きますよ―!朱兎くん!」

「視線が痛い。視線に殺されてしまう」

「だからといってまだ帰りませんよ?せっかくここまで来たのですから」

 そう言って白華は俺の腕を強くホールドする。ちょ、ちょっと白華さん。当たってる。当たってますよ!!

 どんどん俺の理性が削られていく。

 どうしようか...とりあえず別のことを考えよう。ていうかここ、どこだよ。家からどんくらい離れてるんだよ。

 気になったものはすぐ調べてしまう系男子である俺はスマホを取り出し、慣れた手付きですぐさま家からここまでの距離を調べる。

 調べてみると家から結構な距離があった。結構遠いなここ。そりゃ白華もすぐに帰りたくないはずだよ...な...



 あれ?なんで俺は今ここにいるんだっけ?

 白華と一緒に来た実感が...ないんだが...?


 そうしたら何故俺はここにいるのか?

 そして同じ家にいた白華も何故ここに?

 家から出た覚えもないし、気づいたらここにいた気がする。

 俺の身になにがあった。

 考えれば考える度、よくわからなくなっていく。

 そうだ、こういうときは何が起こったのか一個ずつ思い出せばいいのか。

 


 えっと...そうだ。そういえば朝、朝食を食べ終わった時に白華が突然「着替えてきてください」と言ってきた所から始まった。

 理由を聞いたのだが「とりあえずいいから着替えてください」としか言われず、モヤモヤしながら着替えていたことは鮮明に覚えている。

 そう思いながら着替え、その後洗濯物を入れてリビングに戻ろうとしたら...視界が突然遮られた。

「このままおとなしくしていてくださいね?そうすれば、い・い・こ・としてあげますよ?」

 そう言われた直後、俺の意識は闇へ落ちた。

「というわけでデートです!」




 意識が覚醒した後。


 白華は突然、悪戯が成功したときのような笑みを浮かべながらそう叫んだ。



 なるほど。いまひとつわからん。

 話が飛んでいて話になっていない。しかし、実際こうだったのだ。意味がわからない。


 そして俺は考えるのをやめた。

「ま、いっか。よし白華、どこから回るか?」


 これ以上考えても無駄だ。

 今やるべきことはデートを完遂させること。

 だから今日は白華とのデートを満喫する!


 こうして、今から俺達のデートが始まるのだった。



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