八日目 クラスの人気者と一緒のベッドで寝ることになった。

「もちろん、今日は寝かせませんからね?」


 数分前、白華があざとかわいい笑顔でそんなことを言ってきた。やっぱかわいいは兵器である。一体だれなんだろうか、可愛いは正義とか言い始めたやつは。


 そんなことを考えつつ、頭を洗う。先程、白華の笑顔によってすごくいたたまれない気持ちになってしまった俺は、戦略的撤退として風呂まで逃げ出してしまったため、今は風呂でシャワーを浴びているのだ。


 そういえば白華は俺に対してここまでしてくれたのに、洗い物まで任せてしまっていいのか。すごく申し訳ないが、今更白華の所へ行ったとしても遅いと思うのでここは心の中で感謝しておこう。

 一応感謝はしておくものの、だからといって今の白華には油断も隙もない。俺が風呂に入ったとて白華のことだから、俺が風呂でゆっくりしている所を襲撃してきそうである。

 それを危惧した俺は、シャワーだけ済まし、さっさと出てきた。

 着替える途中、そんなことを思ってたわけだが、今更ながら流石に白華でも風呂に襲撃してはこないだろうと思った。

 いや流石に白華だって―――

 白華だって―――

 いや、白華はやりかねん。だって白華だもん、嫌な予感しかしない。


 ガチャッ!バンッ!

 そんな事を思っていると勢いよくドアが開いた。

 ぶっちゃけここ襲撃までは読めていたので、今更来られても何も驚くことはない。

 それに着替えも終わっているから特になんもないし。

 それとなんというか、その行動力は関心ものである。かえって素晴らしいものだと思わず関心してしまうほどだ。

「あ・か・と・く・ん!一緒にお風呂に―――。あぁもう出てきたんですねやっぱなんでもないです」

 なんでもないとか言っておきながら、白華は俺の後ろまで移動する。なんでもなくないじゃないか。

「なんだよ」

「髪の毛、まともに乾いていませんよ。髪の毛、そのままにしておくのですか?」

「ま、まぁ」

「こら。そんなことしたら風邪引くでしょう。ほら、こっち来てください」

 白華は俺の手を握り、そのまま俺を引っ張りながら移動していくのであった。


 そして白華によって連れてこられた場所は、俺の自室であった。

「ほらここ座って。髪乾かしますよ」

 ドライヤーを持った白華はそう言ってベッドに座り、自分の隣の場所を叩く。

 反論なんてしても無駄なのはわかっていたため、俺は無駄な抵抗はせずそのまま白華の隣へ座る。

「ちょっと乾かしにくい...ですね。移動します。ちょっと失礼」

 そう言って白華は俺の後ろへやってきて、そのままドライヤーをかける。

 しかし白華との距離があまりにも近すぎるが故、白華のいい匂いが俺の鼻を刺激してくる。しかもなにか柔らかいものがちょっと背中に当たってるし。

 だけど言おうとしたところで言うのもかなり気まずいので、髪が乾ききるまで俺はギリギリの理性でこの時間を耐えたのであった―――。


「あ、そう言えば今日からここでお世話になるので。よろしくおねがいします」

「まぁ、なんとなく薄々気づいてはいた。だけどさぁ、もうちょっと早く言おうぜ?どうせ親の許可も取っているんでしょ?」

「まぁその通りなんですけどね」

「まぁ予想はついてた。もういいや。俺は今日色々ありすぎて疲れたからもう寝る。白華も好きな所つかっていいから。」

「どこでもいいんですね?じゃ、じゃあ...せっかくだし、い、一緒に...寝たいです...」


 っ~~~~~!!

 急に甘々モードにならないでいただきたい!非常に心臓に悪すぎる!!

 この状態で白華の事を見ることなんてできるはずがなく、白華の方を一切見ずに自分のベッドの中に潜る。ちなみに大きさはもちろんシングル。二人寝るには狭いがこの際仕方ないのでベッドがくっついている壁ギリギリまで体を寄せる。ちなみにここまでずっと壁側を向いているため、一切白華のほうをみていない。


「あの...朱兎くん?」

「一緒に寝ると言ったろ?だったらさっさと入って。早く入んないと俺は別のと......えっ!?」

 言っている途中に白華がダイブの勢いでベッドに入って背中に抱きついてきた。

「へへへ。確保です。もう逃しませんからね?あ・か・と・く・ん?」


 そんな事を言いながら白華はさらにくっついてきた。背中には肌のぬくもりと独特な柔らかさが感じ取れる。結構この状態はドキドキするし、なにより理性をドロドロに溶かされていることを実感する。


 帰宅してからの一件により疲労困憊な俺は、そんな事を思っていたら睡魔によってどんどんと意識が遠のき始め、瞼が徐々に重くなっていく。


 本来は寝れないまま朝になるのがオチなのが鉄板なのだろうが、今の俺はそんなことができる筈もない。それより...ねむ......い...

 こうして、睡眠欲に身を委ねた俺の意識はまたたく間に睡眠という欲望の渦に飲み込まれ、そのまま寝てしまった。


 こうして一日が終わり、また新しい日が向かってくるのであった。




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