15話 病んでる少女は抱かれたい

「祐希は自由奔放で羨ましい。その原動力を少しでも分けて欲しい」

 と莉奈から言われた時があった。

 確かに私は自由人かもしれない。でも私からしたら莉奈の自分を貫いてる感じとか、人に媚びないそういう人柄が羨ましかった。


 私も人には媚びているつもりはないのだが、自然と愛想を振りまいてしまう。そんな性格だ。でも莉奈はそんなのお構いなし。つまらないと笑わないし、好きでもない人には距離を置く。無駄に詰めることは滅多にしない性格。

 そして、莉奈と私の最大の違いは『依存』だ。

 私にはある『依存』を抱えている。


 なんの依存かと言うと、男性の依存。つまりは『セックス依存症』だ。

 実はこれは正式な病名ではない。というよりも正式な病名はないらしい。一番似ている病名は『強迫的性行動症』というらしい。これは精神疾患の病気の一種。つまり心の病なのだ。

 心の病、そういわれれば『鬱病』が頭に思い浮かぶだろう。ただそれにも関係してくるのがこの『セックス依存症』だ。


 まず『セックス依存症』はただ性欲が強い人間がなるものではない。

 私自身、性欲の為だけにそんな依存症になってる訳ではない。

 多分それは心の病からきているもの。私は軽い『鬱病』を患っている。最近ではそんな女子を『病み女子』とか可愛い表現をしているが、実際はそんな可愛い病気ではない。

 周囲にはバレないようにしているが、バレていてもおかしくないだろう。実際莉奈にはバレている気がするし、沼倉君にしてもそうだと思う。


 私はときどき孤独感にさいなまれる。無性に一人が寂しく感じ、人肌が寂しくなるのだ。

 その寂しさを、孤独を紛らわすために私は男に抱かれる。それが『セックス依存症』と呼ぶのかは知らないが、そうして私は何人もの男に抱かれていた。


 その行為に『愛』なんて必要なかった。

 そんなもの別に欲しいとも思った事はなかった。

 一緒に居たいとかそんな感情になれる男なんていなかった。

 ただ欲求を満たしてくれればいい、それが私が男に求める事だった。


 だが、最近その気持ちも変わりつつあった。

 というか、体の欲求を満たしても、寂しさは紛れなくなった。

 それは莉奈の影響もあるのかもしれない。

 莉奈は『愛』に関して疎かったし、別に興味がなかったのだろう。ただ最近沼倉君を紹介して、明らかに変わった気がした。

 沼倉君の話をしている時は私には見せない可愛さ、女の子らしさをした莉奈がいた。それはとても楽しそうで、幸せそうな表情。私はそれを見て安心したし、喜んだ。

 莉奈も沼倉君も大事な友達だし、だから二人を会わせた。それが上手くいったのだから、不満なんていなかった。


 ただ、その二人を見て私はより一層寂しさが増していた。

 私はまだその『愛』というやつを知らない。私も最近はいいなぁ、と思うようにはなった。だが思うようにいかないのが現実である。

 私はそんな純愛をしたことはない、どうしたらいいかわからない。

 そう考えると、心に寂しさが一層増していた。



「いやぁ、祐希、今日も気持ちよかった」


 ホテルのベッドの中で男が満足げに言った。


「そう、よかったね」


 私はタバコに火を付けながら冷たく答えた。

 生憎私は全然満足していなし、心も満たされていなかったからだ。


「なんか最近祐希感じてなくない? 大丈夫か? なんかあった?」


「心配しなくていいよ。今も昔も感じてないから」


 私は男を大きく突き放す発言をした。

 でも、嘘ではない。これは事実なのだ。


「ほんとお前病んでるな。セフレが多いのは知ってるけどさ、それ病みすぎだよ。感じないセックスして何が楽しんだよ?」


「お互い様でしょ。感じてない女に必死に腰振ってなにが楽しいの? そんな女を抱いてるんだから、病んでるのは一緒でしょ」


「確かにな。そうかもしれないな」


 男は少し悲しげに言った。

 私はまだ残っているタバコの火を消してベッドから降り、シャワーへ向かった。シャワーに入る前に私は男に向かってこう言った。


「お互いちゃんと好きな人見つけられる様に頑張ろ。私もそういう男性に抱かれたいし」


「なら祐希が結婚したらご祝儀奮発するよ」


「安心して。結婚式にセフレなんて呼ばないから」


 そう笑顔で返してシャワーに入った。

 少し熱めのシャワーを浴びて、汗を流す。

 そして目を瞑って私は


「ほんと、なにやってんだろ、私」

 

 と心の声を呟いた。

 そして熱めのシャワーは傷ついた心と身体を暖めてくれるような、そんな感じがした。

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