#39 試験運用

 あれから数日が過ぎ、孤児院はホテルからの再度の移動を終えて普段通りとは言えないものの新しい建物での生活をスタートさせていた。僕らは毎日ここへ来て孤児院の手伝いや新たな設備の使い方、そして公衆浴場を運営するための指導をしていた。

 最初、子供たちはこれまでとは比べ物にならない広さの建物と新しい孤児院の仲間オートマタに興奮していた。特に公衆浴場には今まで見たことがないということも相まって相当興奮していた。今までは水浴びか濡らした手ぬぐいで体をふく程度であまり衛生的とは言えず、また冬場などは水が冷たく小さい子たちが体調を崩す危険性が高かった。それが温かいお湯と石鹸で体を洗い湯船につかって体を温めることができるようになったのだ。その驚きも一際だろう。プールも備えているので泳ぐことも可能である。初日はみんな、はしゃぎすぎて夕食後にはすでに寝てしまっている子も多くいた。

 そして、今日は公衆浴場のプレオープンの日である。早速多くの人でにぎわっている。今日招待したのは国王を含めた国の重鎮たち。実際にここを見せた後でこの先の整備計画を話し合うつもりだ。明日からは兵士の人たちに開放することになっている。いつか、来なかったらなんて考えていたが、今日の反響を見るにそんな心配は無用のようだ。一人でも来てもらえればそこから口コミで一気に人が来るようになるだろう。

 そんな重要な日に僕は今、城の一番高い尖塔の上に立っている。本当は向こうに居たほうがいいのだろうが、今回はレナに丸投げして僕は王都全体を監視する。この城は王都のほぼ中央に位置しここで一番高い建物なので監視には丁度いい。龍の能力を持ってすればこの位置からでも十分王都全体を把握できる。どこでどんな会話をしているのか、どんな行動を取っているのか、書いた文字や絵の内容ですら手にとるようにわかる。ほんと、自分のことながら異常な身体・処理能力である。

 さて、今回の目標は~っと、これだな。他にも一応注意を払いながら僕はそいつらの行動を一切逃すことのないように監視する。ちなみに、仕組みをざっと説明すると、龍というのは周囲の空気の動きを0.01ミリ単位で知ることができ、温度変化にも敏感である、という特性がある。普段はそんな使わないので周囲の把握程度に抑えているが、本気になれば王都のみならずこの大陸中の空気の動きを把握することができる。とはいっても疲れるし、他に何もできなくなるのでそんなことしない。それに僕ならば世界書庫アカシックレコードを使った方が楽なのでこっちの方法をとるが。今回はさほど広くない範囲で片手間でできたので自分自身の能力でやっている。

 おっ。あいつらの方で動きがあったから集中するか。一言一行たりとも逃したくない。さてさて、あいつらは何を企んでいるのかね~?



―――*―――*―――



 お久しぶりです。短いですができたので投稿します。あとまだ忙しいので不定期更新が続きます。間隔がものすごく空くかもしれませんがこのまま消えるつもりはないのでこれからもよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る