第21話


 「おぎゃ───────!!」

 朝の目覚めは最悪だった。

 「好き…… 好き…… ヒロ好き…… 」

 ってリーナリアロリ成人が寝言を言いながら俺をギュッとしていたからだ。


 軟骨がグラグラになったよ。愛情表現、考えよ?死んだら終わりよ?…… あ、俺あと2回死ねるわ忘れてた。


 なんとかリーナリアロリ成人を起こして、速攻で回復魔法を受ける。ちくしょう聖女の技め…… 寝る前より体調が完全にいいじゃねぇか…… 痛いけど元気になるんだもんな。


 しかも、ちょっと抱きついて来たリーナリアロリ成人いい匂いだし…… むう、いや!いや!ノーロリータだ!

 「ヒロだってまだ小さいのに…… 」

 「うっせ!俺は精神的には大人なの!」

 

 言い合いをしながらテントを出るが…… 爺ちゃん達いないねぇ……

 ロックマンさんバカ親父が俺に気づくと椅子に深く腰をかけ焚き火の前で紅茶を飲みながらチラリと爺ちゃんズのテントをみる。ロックマンさんバカ親父焚き火が似合うなぁ。

 「…… 爺ちゃんのテント覗いてみようか」

 「うん」

 


 こうして血走った目をする爺ちゃん4人を朝食のテーブルに引き摺(ず)り出す事から遺跡探索2日目は始まった。


 「ふぉぉぉう!」

 とか夜中に吠えていたけど…… まさか徹夜するとは…… とりあえず、ワールの日記は取り上げてストレージに入れると爺ちゃん4人涙目ですよ


 おいリーナリアロリ成人!俺が老人虐待したみたいに見るな!


 ストレージから出した朝食カリカリなベーコンと卵、ナンみたいなぺったんこなパンを食べるとジトッと爺ちゃんズは俺を見る。



 「あの、まず仕事をしないと」

 「…… まず、という事はまた見せてくれるのかえ?」

 「ええ、まぁ」

 なんなら仕事が終わったら一冊あげようと思う。

 この世界の人達の物なんだしね…… 多分、この4人なら俺よりワールの日記を役立ててくれるだろう。



 騎士2人が用足(ようた)しに行った所でコッソリとプレゼントする件を伝えた……


 「あばばばば!」

 「おひおぉぉぉ!」

 「おお!女神様!」

 「ぶぶんぶぶふふん!」

 興奮しすぎてお爺さんおかしくなっちゃった。うふふ。


 「あのじゃの、早よ帰ろうヒロ君」

 「じゃな!じゃな!」

 「いやいや、仕事せんならあげませんよ!?」

 ホントに子供かよ!


 いや!騎士さん!俺は何もしてませんよ!?

 ホラ!ほぉらぁー!お爺ちゃん俺が騎士に睨まれるじゃないですかー!?やだーもう!


 気を取り直して寝不足の爺ちゃん達と石扉の前まで再び来ると、ゴニョゴニョと4人で相談を始める。

 「ヒロ君、お手柄」

 「うい?」

 「昨日の本にこの遺跡の事が書いてあった」

 「…… マジで?」


 どうやら、ワールさんこの遺跡にまだ人がいた時代に旅をしていたようです。


 今は遺跡であり墓と思われていたこの場所は、石窟都市ヴァーンの墓地地区と郊外地区だったみたい。


 「じゃあ…… 今までは本筋ではない場所でこの扉の向こうが都市区だって事?それは…… 凄くない?どれほど広大な石穴なんだ…… 」

 「うむ、俄(にわか)には信じられないのじゃが。ワール氏の言葉が本当ならば真実じゃろう」


 信仰爺と俺たち3人が唖然としながら喋っていると魔道具爺とマテ爺がそれぞれ石扉の両脇で何かのメモを見ながら作業をして大きく頷(うなず)くと、こちらに向けて手を上げた。

 「本(・)にあった作業手順をメモして渡しておいたのじゃ」

 なるほどね。確かによく見ると石扉の両脇に分かりにくいようにボタンがあるな。これ、知らなきゃ岩の一部と思うぞ。


 「さてさて、騎士のお二人」

 「はっビシッ!!」

 「今から石扉を開きます、何が出るか分からないので護衛をして下さいね」

 信仰爺の言葉で扉の前に移動する騎士。

 え?もしかして今すぐに石扉、開けるの?事前調査にしては進めすぎじゃない?人呼ぼうよ?


 「さてさて、ワール氏の本が本物ならば開くはずじゃ」

 あダメだわこれ爺ちゃん達、知的欲求が高まりすぎて馬鹿になってるわ。



 …… 石扉は何かの理由で緊急的な鍵(ロック)が掛かっていたようで、それを外す方法がワールの日記に書かれていたらしい。


 ワールって結構、権力者と繋がりがあったのかもね。都市の緊急開錠なんて一般人に知れたらマズイもんな。


 「さてやるぞ?良いか?」

 「もちろんじゃ!」

 魔法爺がまず開錠魔法アンロックを石扉に唱え

 次に信仰爺が快呪魔法コンフォートを重ねて唱える

 さらに魔法爺がまた開錠魔法アンロックを唱えると……


 ゴグゥゥゥゥン………… !ガチャっ!

 魔法を受けた石扉の開錠を知らせる音が大きく聞こえた。マジ?開くのかよ。準備とかさせてよ!


 「正規の順番で石扉の両脇を操作して、決められた順番で魔法を唱えたら魔窟都市ヴァーンは開かれる…… まさに本物の本オーセンティックブックじゃったか…… 」

 「うむヒロ君、キミは興味深い。ぜひぜひ弟子にならんか?」

 「えっと…… すみません」

 石扉を見ながら勧誘しないで下さいねお爺ちゃん。


 ゴウンゴウン…… !

 低く轟く音と、揺れる地面。曠劫長い時を経て開くので埃や石が降ってくる中にて扉は開いた。


 まず、驚いたのは明るい事だ。

 何千年も稼働しているのであろう天に祀られた太陽のような魔道具から光が燦々さんさんと都市に降り注いでいた。

 薄暗い場所だったので少し目を細め明るさに慣れると、次に目に入ったのは都市の中心部にある巨大な魔物とこちらを目掛けて走ってくる奇妙な人型の魔物だった。

 「む、あの身長に顔、体つきといいあの魔物はトロールであるな」

 「トロール?」

 「うむ、化けるのが上手いのと、ただただ凶暴な種族がいるのだが…… 今回のトロールは凶暴の方であるな」

 うん、鼻が大きく身長は人と同じぐらい。肌は灰色でやたらと筋肉か脂肪か分からないけど丸々としているな…… 気持ち悪い。あれがトロールか…… フィンランドの絵本ヤツと全く違うな……



 「う、うわぁぁぁぁ!!」


 騎士2人は、まだまだ走り来るトロールの到着まで時間があるのに焦り、動いてもいない巨大な魔物へ目をスライドすると…… あらあら。SAN値ゼロ正気じゃ無くなり、墳墓の外へ通じる道へと逃走した。


 役に立たないなぁ……


 いやむしろ昨日、爺ちゃん達が笑い話にしていた『もしも』の時に体裁よく厄介払いできるからワザと評価が低い騎士を選んだのか…… それっぽいなぁ…… 後進が育ち、高額な年金を貰う目の上のタンコブか。


 「ヒロ」

 「おうよ」

 リーナリアロリ成人の声に合わせてストレージからショートソードを取り出す。そこそこレアで連戦でも刃がダメになりにくいものだ。


 「!ダメじゃ!子供が敵う相手では無い!」

 魔法爺がダッシュしながらトロールに向き合うリーナリアロリ成人に叫ぶ。


 「子供が死ぬのはダメじゃ、ワシらが盾になる…… へ?」

 信仰爺が言葉の途中で惚ける。


 醜いトロールの前に飛び込むとリーナリアロリ成人は持っている杖に魔力を込めて横に力任(ちからまか)せに薙(な)いだ。

 あ、トロールの肉が拉(ひしゃ)げブッ飛んだ…… あーあ、グロいなぁ体が半分にねじ切れているのもいるな。


 チラリと自分が出した剣を見て、ストレージに戻す。

 自分、グロ耐性ないので魔法できいます!


 「物理!物理!物理ぃー!」

 叫びながらどんどんと前に進むリーナリアロリ成人

 いや怖いよリーナリアロリ成人以前から、なに!なに?その掛け声…… どんどんトロールをぐっちゃぐちゃにしていく小さな背中に畏怖。


 「ヒロキ、我らも戦おう」

 「お…… おう。あ、爺ちゃん達はいいよ俺とロックマンさんバカ親父リーナリアロリ成人で十分だから」



 リーナリアロリ成人の無双姿に目を見開いて驚く爺ちゃんズにそう言うと俺とロックマンさんバカ親父もトロールに向かい駆け出した。


 さて、これを処理したら…… 都市の真ん中あたりにいるあの巨大な魔物退治かな?

 あれは…… 倒せるのか?


 山のように大きな巨影に心臓をバクバクとさせながらゾロゾロと湧くトロールを倒していった。

 


────────────────────────────────

トロール

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カクヨムでは画像挿入が出来ないようです。

ヨンバウエルという偉大な挿絵作家のトロールがイメージです。

実際は挿絵は温和な絵なんですよ。

ボールペンでグリグリ描いて修正液もないで汚い絵ですがトロールはこんな感じです。

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