第13話


 「おはようございます!ヒロさんロックさん!」

 「あじゃじゃーっすおはようございますー!」


 翌朝、俺とロックマンさんバカ親父は冒険者ギルドに依頼の完遂をしにきていた。

 追われる者・有名な者の2人だしー!

 偽名だし!でヒロ・ロックコンビとしてロームン帝国で冒険者登録をした。(俺は冒険者証IDタグを失くしたと伝えて、ちょっと多めにお金を払っての再登録)


 冒険者証を失くして〜の、偽名を使い〜のなのでギルドのデータは真っさらに上書きされたから初めからの再スタート。


 まぁ、俺はね元々の所、年齢制限があったから最下級ランクFランクだったし、ロックマンさんバカ親父は冒険者登録をしていなかったからさ!

 

 振り出しだよ!振り出し!ニューゲーム!何の後悔もないから大丈夫!戻り幅が最小限!



 「えっと、ロックさんは今回の依頼で冒険者ランクはEになります…… あの、期待した目をしてますが、すみませんヒロさんは年齢的にランクアップはできません……Fランクのままです 」


 「…… わかりましたよ…… なんだよ親父の方が先に進んじゃって。」


 Fラン大学でもいいじゃない生き方よ?生き方。

 「うむ、悪く思うなヒロ」


 ちなみに、ロックマンさんバカ親父の年齢は34歳らしい。


 その後、うだうだと愚痴を言ってから依頼者へ探し物の【ティアラ】を納品、盗賊のアジトの説明と捕縛しているという情報の伝達、盗賊が貯めていた金品の所持権の確定をするともうお昼過ぎになっていた。



 金はたんまりとあるから権利を放棄して全て冒険者ギルドに投げ出してもいいんだけど、ロックマンさんバカ親父に金の出所(でどころ)は周知させておかなければホテル宿泊料や食事等で散財した時に国に怪しまれると言われて仕方なくね…… 書類仕事していました。


 

 「おとーさーん、おなか減ったよー」

 「うむぅ…… 私はまだ結婚もしぶつぶつとていないのだが独り言


 「…… え?そうなの?」

 「う…… む、そうなのだよ?」


 ええぃ、もじもじすんな筋肉おじさん。


 微妙な空気のなか場所をギルドから町中に移動して昼ごはんを食べる。これも…… 辛いなぁ……ヒーっどうやればスープをこんな激辛にできんだ?……


 「ところでさ親父さん」 

 「うん、?」


 「俺は天涯孤独で家族無しなんだけど、親父の家族の事とか何も知らないんだけど?」

 「うむ、そうか…… 私も両親は死別しているが歳が離れた妹がいるぞニヤリ

 


 おおう、筋肉マンの妹とか…… 想像がつかんな……


 「む?何か勘違いしているようだが私の妹は母に似て華奢で可愛いと有名だったぞ」

 …… だった。ね、なんか訳ありっぽいし〜

 「とりあえず、今はこれ以上は聞かないでおくよ。」

 「うむ、」


 

 その後やたら甘いデザートと飲み物でシメる。この世界ではよくある異世界ものみたいに極端に食の進化が遅い事はない。この辛いのも東京の西池袋とか巣鴨なんかで店を出したら満員は無理だろうけど客を呼べるんじゃなかろうか?


 ただ…… まだカレーを異世界こっちで食べていない。メシが辛いのは分かった。辛くてもいい俺はカレーが食いたいのだ。池袋ではない神保町の味が欲しい。


 「さて、ヒロキまだ日は高いがどうする?」

 「…… まぁ、焦ってもいい事ないしホテルで休もうぜ?」

 

 辛いのが入ったからかチクチクと痛む胃を摩(さす)りながらホテルに向かうと、邪魔な大きな馬車が表玄関(エントランス)前を塞いでいた


 邪魔だなぁ…… これで俺に用事があるならテンプレ…… あぁ、テンプレだわこれ……



 地球の中世にあった区間バス5ソルの馬車版馬車はこの異世界にあるし、馬車の振動をリーフ式軽減技術サスペンションもこの異世界にはある。馬車が町中なら一般に流通しているのだが……


 「華美な装飾だねぇ…… 」

 「うむ、御者がこちらに気付いて来ているな…… ちなみにだがヒロキ、あんな馬車は持ってるか?」


 んー?ああ、多分これかな?

 脳内一覧でストレージのソートを使い馬車を並べる。


 「えっと、あんな馬車はあるし、なんならもっと豪華な馬車もありそう…… 流石に馬は入ってないけど…… 」

 「む、けど?」

 「うん、古代人工遺物アーティファクトな自走式の馬車を持ってるわ…… 馬車馬(ばしゃうま)が無くても走れる物…… って事。」


 馬車から馬が要らなくなる。つまりモーターカーである。



 篦棒(べらぼう)な所持物にロックマンさんバカ親父は眼を剥いたが、御者が近くに来たので「ゴホン!」態(わざ)と咳払いをして意識を切り替える。


 「ヒロ様とロック様でらっしゃいますか?」

 ピシリと老紳士と言った風の御者は俺たちに質問を投げる。


 「いえ、おいどんはそんな人間ではありもうさんですばい」


 そして俺は知らんぷりをしてその場を離れたのだった。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 「む、よかったのかヒロキ」

 「ってかね、親父のせいだよ貴族にトラウマもったのは」

 「む、、そうであるか」


 まさか知らんぷりすると思わなかったのかロックマンさんバカ親父はぎこちなくギッシギッシと歩いている。


 貴族とか気骨(きこつ)に辟易だぜ!


 「それに、ぶっちゃけ親父に聞くけど…… 帯剣貴族だっけ?貴族に戻りたいの?」

 「う、む、正直なところを言うと領地を持たない私は十分な金と住む場所があれば憂いはない。それに旅をする方が私の目的も叶うやもしれない」



 目的ね。ロックマンさんバカ親父と暮らして分かったけど基本的に善人なんだよこの人は。

 元々は田舎の一般市民だった事もあり政治に対しての強い理想論や人に敬(うやま)われる事に欲を持たない。


 金…… なんだよなぁ…… お小遣いというか冒険者家業で稼いだ金は全部ロックマンさんバカ親父に渡しているんだけども…… それで何かしてるみたいなんだけども……


 まぁ、生活費の全ては俺のストレージこの世界の人々の金から出してるからロックマンさんバカ親父が借金して払底しても問題はない。

 ───── 女遊びしているのかな?連れて行ってくれないかな?


 「連れてってよー!」

 「う、?何のことだヒロキ?」


 いかんいかん、妄想が凄くなってしまった。


 とりあえず時間を潰そうと、ブラブラと歩き他の国の人間が開いたと思われる喫茶店サロン・ド・テを見つけオープンテラスでチョビチョビと茶を飲み、久しぶりの辛くない甘すぎない物を食べながら日が暮れるのを優雅に眺めてからホテルに戻った。



 チップを多めに置いておいたから次回は胡瓜(きゅうり)サンドイッチの持ち帰りを頼んでみよう。


 「む、実に心地よい時間だったな」

 「ああ、そうだね」


 夕暮れを見ながらロックマンさんバカ親父は転寝(うたたね)をしていたから目がスッキリしているようだ、なんていうかバカンスっぽいよね。最高ヒャッホーイ!



 まぁ、フラグは結局のところ回収したんですけどね。


 ホテルのロビーにはまだ、貴族の御者さんと華美な服を着た老婦人がいたわけです。貴族さんたらホテルの馬繋場に馬車を停めていたみたいで、もういないと思って警戒薄くスイッとホテルに入っちゃった!


 ホンマ長時間待ちまんなー!

 しつこいでっせー!

 関西弁を心にヒクヒクと頬を引き攣らせ挨拶をする。


 「お帰りなさいヒロ様、ロック様」

 「…… 遅くなりました」


 御者さん怖えぇよ。目が笑っていないよごめんなさい。


 斯(か)くして、俺たちの部屋に有無を言わさず来訪した貴族さんは依頼を伝える事に成功するのだった。

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