いかがわしい事をするな!

 付き合いというのはどうしても発生するものなのだからそれを咎められてはもう人の世で生きていく事などできはしないではないか。






「ただいま!」


 帰宅! 風呂! 飯! システム化されたルーティンは無駄がなく合理的だ。やる事やってさっさと楽しい自由時間を満喫しよう。よっしゃ今日はビール飲んじゃおっか! いやぁ楽しみ楽しみ!


「下妻氏ー?」


 いきなり出鼻を挫かれた! なんだいったい。いつもは帰ってきてもずっとソシャゲやってるくせに! あぁ! 予定が狂う! 計算しつくされた完璧な予定が! クッソ! ふざけんなよ!?



「なにかな?」



 などと思った事そのまま言うわけにもいかないので努めて冷静に対応する。これが大人。これが付き合い。これが人間関係だ。自分でいうのもなんだけれど、随分な人格者だと思うよ俺は。


「ちょっと見てもらいたいものがあるー」


 ほいほいなんだ? ソシャゲで最高レアのキャラでも出たか? ガチャなんかに金を突っ込む人間の気が知れないが、まぁそこは個人の趣味。寛容な心で受け入れよう。


「どれどれー?」


「これなんだけどーなにこれー?」


「……」


 差し出されるは風俗嬢の名刺。

 そっかぁ。そっちかぁ。見つかっちゃったかぁ。


「え? なにそれ? 知らん。初めて見た」


 とりあえずしらばっくれてみよう。ワンチャンいけるかもしれん。


「後ろにさー"シモヅマさんありがとう。また来てね"って書いてあんだよねー。これで知らないは無理あると思うー」


 しまったしっかり確認するべきだった。というか捨てておくべきだった。男下妻、一生の不覚。

 

「なにこれー!? これなにー!? ねぇなんなーん? なんなーんねぇ!? なんで彼女いるのにー? いるのに彼女ー? 風俗などへ行くー? おかしくなーい? おかしいよねー? これ絶対おかしいよー? ねぇなんなーん? なんなーんねぇ? おっまほんこれ、これほんおっま、ちょ、なん!? なんなん!? なんなーん!? ねぇ!? なんなんなーん!?」


 いかん。喧嘩中の猫みたいな声になってきた。釈明を……釈明をせねば!


「それは付き合いで……」


「付き合いー!? 付き合いで彼女以外と突き合いをー!? はーありえぬー!? 死刑執行確定ですわー!? 殺す」


 こっわ。後半マジのトーンやんけ。なんとかせなあかん。


「ちゃうねん。店入ったは入ったけど、なんもやってないねん」


「ふーん」


「ほんまやって! 信じたって! ほんまにドリンク飲んで適当な話しただけやねんて! 誓ってやましい事はしとらんさかいに!」


「……本当は?」


「……」


「……ねぇ、本当は?」


「……」


「……」


「……おっぱいは触った」




 正直に白状したおかげで、なんとかぶん殴られるだけで済んだ。







 本日のQ&A


 Q.風俗に通っていた事が彼女にバレてブチギレられました。そんなに怒る事ないのにね。


 A.は?

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