一話・魔法の1歩⑤

 僕たちが向かっているのは、アンライトの家だ。アンライトは、一人暮らしをしているらしく、ウィッチマ国に滞在中は、アンライトの家に泊めてもらうことになった。停泊代が浮くのはありがたい。一様、お金は持ってきているが多くはないからな。


 この国に入ってからというもの、周りから多くの視線を感じる。アンライトが「あと少しで家に着きますよ」と言った時も、裏道の所に三人の少女たちがこちらを見ていた。いや、正確に言うと、睨んでいた。前世でも、出勤している時にこんな感じの人はよくいたものだ。今時、こんなのなんともない。


 少し先を進んでいるアンライトに目を向けると、ほのかに震えているようだった。いや、自分が震えていて、アンライトが震えているように見えているだけだろうか…。体は正直というが、こうゆうことなんだろうか…。


 アンライトの家は、通りにあった家とは違い、苔で緑になった石でできた家だった。所々、床に穴が開いていたり、窓にはヒビが入っている。いかにもボロ屋といった感じだ。それでも、泊らせてもらえるんだ。文句は言えない。


 僕は、一週間アンライトの家に泊まりながらウィッチマ国を観光した。ウィッチマ国は、魔法大会「ウィッチマ・マジック」が近いということもあり、その話題で持ちきりだ。本に書いてあったこととは違い、昼に魔女は多く見るが魔法使いは全くと言っていいほど見ない。


夜に窓から道を見ると魔女はほとんどいない。みんな寝ているのだろう。その魔女と入れ替わるように仮面を被った人達が夜道を歩いていた。


 異変に気付いたのは七日目の夜だった。だいぶ、観光もしたのでそろそろウィッチマ国を出て、次の国に向かおうかと思う頃だった。それをアンライトに伝えると「もっとこの国にいてください。」と残念そうに言ったが、ずっと居ても申し訳ないからな。 


 毎日書き続けている日記を書き、一息つく。椅子に座り、これから向かう国の方向を調べるため、地図を開こうとするが肝心の地図がない。僕は体の熱がスーッと無くなっていくのを感じた。この世界で地図の数は少なく、高価な物とされている。もし、この国にあったとしても、高い値段を払わないといけないだろう。あの地図がないと今後の旅は続けられない。そのくらい、この世界は広いのだ。


 いつ、いつ失くした?地図はいつもポケット入れていた。どこかに落としてしまったか?


 僕は、次の朝早くから観光で行った名所や通った道、お茶をした喫茶店などに地図を探しに行った。名所めぐりに疲れて座った椅子の周りや石畳の道の隅なども探したが見つからない。そうだろうなと思った。

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