第9話 水着選び

「どれがいい?」

「....。」


 今日は昨日の約束通り葵の水着を選びに来た。

 来たのはいいが居心地が悪い。

 そりゃ女性用の水着の店に男が入る。キツイだろ。目のやり場に困る。


 目の前では葵が自分に水着を当てながら俺に意見を求めてくる。

「これとこれならどっちがいい?」

 葵が手にしているのは赤のビキニと花柄のワンピースタイプの水着

「あ、葵に赤は似合わないだろ」

「やっぱりそう思う〜。けど、ビキニは否定したいんだね」

 嬉しそうに笑顔な葵。

「いや〜、翔馬の喜ぶ水着を選ぶのは大変ですね〜」

「別に自分が着たいと思うのを買えばいいと思うぞ」

「私が着たいと思うのが翔馬にかわいいって思ってもらえる水着なの」

 満面の笑みを浮かべながらそう言われると心臓が跳ねるだろ。

「あ、それなんてどう?」

 葵が手に取ったのは白のオフショル方の水着だった。

「いいんじゃない?」

「お、今日1番の反応。よしこれを試着してこよ〜」

「え、試着!」

「そんなに驚くこと?別に普通でしょ。服買う時だってするんだからさ〜」

 まぁ確かにそうだな。

「あ、それとも〜。かわいい私の水着姿を見れると思うと興奮しちゃう?」

「ばッ!そんなんじゃねーよ」

「ほんとうかな〜。翔馬意外とムッツリだからなぁ〜」

「と、とりあえず早く試着してこいよ」

「あ、逃げた。まぁそうだね〜試着してくるよー。あ、店員さーん。すいませーん」

 ふ〜。とりあえず乗り越えたぜ〜。


 そう思っていた時期が私にもありました。

 葵が試着に行く。ということは俺はこの気まずい空間に1人だ。

 さっきまで葵がいてくれたことがどれだけありがたかったか。今身に染みて感じております。

 とりあえず葵が入っている試着室の前で待っている訳だが。

 中から服を脱ぐ音が聞こえてくる。

 それもやばい。

 中で葵が服を脱いでいると考えると変な想像をしてしまう。

 ダメだ。立ち去れ煩悩。

 その時中から音が途切れカーテンの隙間から葵が顔を出している。

「あ、あのさ翔馬」

 なんか歯切れが悪いな。顔もほんのりと赤い。

「み、見たい?」

「まぁ見たいかな」

「そ。そっか」

「無理はしなくていいぞ」

「け、けどプール行ったら見せないとだもんね」

 葵は覚悟を決めた顔になっていた。

 次の瞬間カーテンが開かれた。

「ッ!」

 そこには恥じらいながら体をくねくねさせている水着姿の葵が。

 白のオフショルの水着は葵に凄く似合っていた。

「なにか言ってよ」

「すげ〜似合ってるよ」

「も〜バカ!」

 なにか言えと言われたから行ったら怒られた。

 サーっと勢いよくカーテンが閉まった。

 葵は限界を迎えたようだ。


 次にカーテンが空いた時は葵は私服だった。

「買ってくる」

「それでいいのか?」

「翔馬が似合ってるって言ってくれたからこれでいい」

「お、おう」

 そのままスタスタと逃げるようにレジへと消えていった。

 帰ってきた時にはもう羞恥心はなくなっていたようで普段通りだった。


「さぁ〜切り替えて買い物の続きだ〜」

 普通通りは通りで付き合わされるからめんどいな。

 まぁ付き合うんだけどさ。


 買い物が終わった時俺は息の根が上がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る