4-6
すっかり日がくれると。
街灯の少ない道は、思った以上に暗い。
途中までは商店街なのでまだマシだが、曲がって細い道に入ってからは本格的に暗い。
昨日もそうだったが、月明かりがたよりである。
雨が降った時のこととか考えたくもない……
って、ゆーか、あの部屋に傘なんてなかったぞ!
あぁ、ホントいつになったら起こしてもらえるんだ?
こうなったら、手あたり次第、フラグだと思える事をやっていくしかないのかぁ……
「なぁ、エル。本当の名前ってやっぱり分かんないのか?」
「は、い。わかり、ません?」
「そうかぁ……」
昼間さんざん、やり取りして分かったのだが。両親のことは、さっぱり分からないみたいなのだ。
母親見つけてゲーム終了って展開も、かなり厳しいだろう。
なにせ最悪の場合。母親だと名乗り出た人が見つかっても本当かどうかわからない。
となると、今のところ一番可能性が高いのは、エルが日常会話をできるようになり。
市川家の養子にでもなるってところだろうか?
なにせ二人いた息子は戦死って話だったからな。
つまり市川家は、跡取りを必要としている。
ならば大きくなったエルが婿をとって後を継いでいくっていうストーリーもなり立つわけだ。
「あ。あの?」
「どうした? お腹痛いか?」
「そ、の。よび、かた、おしえて、く、ださい」
「そーいえば、そーだったな」
いちおう大国寺三郎っていう名前の設定は、あるが……
正直、三郎さんとか呼ばれたくない。
むしろ今後の事を考えたら、可能性を増やしておいて損は、ないだろう。
「俺のことは、パパってよんでくれ」
「ぱぱ?」
「あぁ、カタカナでパパだ!」
「パパ?」
「あぁ、それでいい」
部屋に戻ると、昨晩に比べれば、少しばかり過ごしやすい温度になっている気がした。
でも、熱いのには変わらないけどな!
今の状況がまだ続く可能性がある以上。
電球は、買ってもらわなければならないだろう。
「じゃあ、寝るぞエル」
「はい、わかり、ました?」
「あぁ、良くできましただ!」
頭をナデナデする。
月による薄明かりの中でも銀色に近いエルの髪と白い肌は、そこだけ別世界のように浮いて見えた。
蚊に刺されて、かゆいの我慢するか、熱いの我慢して熱中症になるかの二択。
今日も窓は全開のまま寝る事にした。
許されることなら明日こそは違う物語が始まってますように!
そんな願いを強く込めながら目を閉じたのだった。
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