3-5



 それはそれとして、深雪の方も思っていたより、さっぱりした顔をしている。

 もっとぐずって泣いたりするんじゃないかと、不安なぶぶんもあっただけに意外だ。


「えへへ。護くんと結婚かぁ」

「言っとくけど、きちんとメシ食って可愛くなったらだからな!」

「分かってるもん! それまでお母さんに貸してあげるだけだもん!」

「うふふ。それじゃぁ、お言葉に甘えて護君いただいちゃうわね」


 あと片付けをするから先にお風呂に入ってほしいと言われ――

 俺は準備するために部屋に向かったのだった。



 それほど広くもない普通サイズのユニットバス。

 まぁ、一般家庭ならこんなもんだろう。

 ボディーソープは同じものを使っているみたいだがシャンプーとリンスは別々に使っているみたいだ。

 俺は、念入りにもほどがあるだろう、というくらい隅々まできれいに洗ってから湯船に浸かった。

 このままここで春子さんを待つというのも悪くないだろう。

 今のところ、夏美による妨害もないしな!


 ――って!


 まったくにもって、いまさらながらだが大丈夫なんか俺!?

 春子さんの、アソコ見て吐いたりなんかしたら、幻滅されるどころか、今夜のお楽しみすらなくなるぞ!

 ここは部屋に戻って、明かりを消してから、相手に任せるってのが無難なんじゃないのか?

 なにせ、相手は一児の母親だ。子作りのプロと言ってもいい。

 下手にカッコつけて大失敗やらかすくらいなら、お任せコースを選択すべきだろう。


「護君入るわね~」


 遅かったー!

 あまりにも、ゆっくりし過ぎた。

 慌てて春子さんを見ないように顔をそむける。


「ちょっと~! いまさら恥ずかしがるとかしないでよー」

「あ、いえ、その」

「それともなに? 朝のアレは冗談だったとか言うつもりじゃないでしょうね!」


 うっ。春子さんの声に怒気がふくまれている。

 これは、まずい展開だ。

 ま、まぁ、いくらなんでも大事なとこくらいは隠してるだろうし。

 見ても大丈夫だろう。


「――っ!」


 どこも隠してなかった、見たくない部分までハッキリと……って、あれ?


「なんか、思ってたよりも普通ですね」

「ちょっとー! 今度はバカにしてるの?」

「あ、いえ、普通に感動してるだけです!」

「ホントにー?」


 ジト目での視線がヒシヒシと突き刺さる。

 にしても、不思議だ。きちんと手入れされているからだろうか?

 一樹の時は、あれほどまでにダメだったはずの物が全然嫌じゃない。

 むしろ、ウェルカムってな気分である。

 もしかして、夢の中なら大丈夫ってことなんだろうか?

 江藤さんにかんしては、さっぱり分からないが。

 少なくとも、ちあきは、つるつるだった。


「スイマセン、なんか急に緊張してきちゃったみたいで……」

「ふふふ。それはそうよね。で~も、安心して。きっちり私がリードしてあげるから」

「あ、はい! おねがいします!」

「ふふふ。ホント、朝とは別人みたいに可愛いのね」


 ゆっくりと近づいてくる春子さん。

 とても母親には見えない綺麗な身体つきに胸が高鳴る。


「ね、立ってみて?」

「は、はい!」


 言われるままに立ち上がると、春子さんの視線が下に向く。

 俺の、発射準備がととのったモノを見て嬉しそうな笑みを浮かべる。


「あら、あんなにちっちゃかったはずなのに、ずいぶんと立派に育ったものね」

「そ、そうでしょうか?」

「うふふ。自信もっていいわよ。で~も。深雪とする時は、ゆっくりしてあげてね。さすがに、このサイズをいきなりは苦しいと思うから」

「あ、はい。わかりました。善処します」


 だめだ、緊張しすぎて声がうわずっちまう。


「ふふふ。大丈夫、もっと肩の力をぬいて。私がきっちり教え込んであげるから……ね」


 そう言って、春子さんは舌なめずりをして俺に抱き着いてきた。

 むにゅっと、柔らかい胸が押し付けられ――

 唇が近づいてくる。


 本気のキスをされる――!


 そう感じて、思わず目を閉じた瞬間だった。

 足元から何かが崩れ去るような感覚がして――!?


「って! ちょっと! 護君!?」


 春子さんが呼んでる!



 これからって時に何しやがる!

 夏美のヤツか!?

 どうして、こうも間の悪い時に起こすかな!


 もんく言ってやろうと思って目を開けると……?

 あれ、どこなんだ、ここは?

 黒いパンツもなければ、眠気も襲ってこない。


 ――ってか!


「くさっ!」


 なんだこの臭いにおいは!?


 それに体中がかゆい!


 ドンドンと、何かを叩く音がする。


三郎さぶろう! おきとるなら、さっさとあけな!」

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