婚約破棄されたので辺境の森に引き篭もって開拓をする事にした~役立たずの【ブースト】が実は最強スキル?!~

TB

第1話 婚約破棄は突然に……

「今宵は満天の星空も我々を祝福しているように見えますね。セシリア様」


「レオンハルト。そんな台詞言えるんだ?」

「いや……いつものセシリア様とちょっと雰囲気が違うから、場を和ませようと言ってみました。お気に召しませんでしたか?」


「そんな事無いわよ。このパーティを乗り切れば、正式にレオンハルトは私の婚約者として認められ、この国の次代の王配にして宰相という最高権力者への道が開けるわね」

「本当に私で良かったのですか?」


 そう問いかけた俺に返って来た返事に耳を疑う事となった。


「そうね。駄目かも?」

「えっ?」


「レオンハルトなんかじゃ私の結婚相手として相応しくないって事よ。止めた。今夜のパーティーは取り消し。お客様を呼んであるんですから、レオンハルトが一人ずつに謝罪して置いてね。一応私が今夜のパーティの取り消しだけは言っておくわ。優しいでしょ?」

「な、なにを……急に……セシリア待て、待ってくれ」


「第一王女にして、次期女王の私を呼び捨てになされるなんて、レオンハルト様はそんなに偉いんですね。でも私には不快です」


 俺にそう言葉を放ったセシリアは、すぐに王宮騎士団を呼び、俺を拘束させた。


 何でこんな事になった?

 昨日まで……いやこのパーティが始まる迄のセシリアは、普段通りの優しいセシリアであった。


 待て、おかしい……足がふらつき……意識が朦朧とする。

 今のは……そもそもセシリアだったのか?


 そう考えながらも俺の意識は混濁していた。

 セシリアに呼ばれた近衛騎士によって、ベランダから連れ出される時に、セシリアの声が響いていた。


「今夜のパーティは中止です。理由は婚約者であったレオンハルトの不敬により、婚約は破棄とします」


 それだけを告げると、セシリアはパーティ会場から消えて行った。

 その姿を見送る、現ハインツ王国女王陛下、ミランダ様が口元を歪ませる。


 何かがおかしい……

 一体何がどうなっているんだ。


 俺は近衛騎士に頭を絨毯に押さえつけられ、各貴族家の参加者達から、罵声を浴びせられる中、パーティ会場の参加者が居なくなるまで、頭を押さえつけられたままだった。


 抵抗する気力もなく、朦朧とする意識の中で、パーティが始まってからずっと感じていた違和感を、考えていた……


 最後まで会場に残っていたのは、クロワ侯爵……俺の父親だ。


「レオンハルト残念だ。貴族たるもの汚名を被ったまま表舞台に立てる程甘い物では無い。お前はクロワ侯爵家から追放する。そもそもお前は我が家系に相応しい剣術の腕も魔術の才能も持って居なかったのをセシリア王女様に気に入られていただけの存在であったからな。それすらも無くなったお前には何の価値も無い。どこへなりと消えてしまえ。今後一切クロワの家名を名乗る事は許されない」


 その声をかすかに聞き取りながら、俺は意識を完全に手放した。


 ◇◆◇◆ 


「姉様。ご機嫌はいかがかしら?」

「ミーリア……早く拘束をほどきなさい。今日は私の……私とレオンの大切なパーティなのよ。邪魔をする事は許さないわ」


「あー。そのパーティなら替りに私がうまい事やっておいたから、姉様は安心して頂戴。それともう一つだけいいかな?」

「何を言ってるの貴女は?」


「この国は、私がもらう事にしたから姉様は心置きなく消えて下さい」


 そう言葉を吐いたミーリアの後ろから、全身をすっぽりとマントで覆った怪しげな男? が現れた。


「お願いするわ。ダンタリアン様」

「ダンタリアン…… まさか序列71位の悪魔大公?」


「あら? さすがお勉強の得意な聖女様だねぇ。私はそんなこと知らなかったけど、私がこの国を好きに出来る方法を聞こうと思って悪魔を呼んだのよ。宮廷魔導士が七十二人も魂吸い取られちゃったんだから、ちゃんとその分の仕事はして貰わないと割が合わないからね」

「ミーリア……貴女自分が何をしたのか解ってるの?」


「えっ? 人の話聞いてた? 姉様。私はこの国が欲しいだけだよ? 女王に成ればこの国の国民が私に贅沢させるために、勝手に税金納めてくれるから、なった方がいいじゃん」

「えっ……たったそれだけの理由でこんな大それた事を……」


「姉様は、このまま証拠もなく消えて貰うんだから安心してね。まぁ見た目は同じなんだから、消えたのはミーリアって事にして、今からは私がセシリアになるけどね」

「そんな、母上が、女王がそんな非道を許すわけないわ。貴女がミーリアだって事は、母が見れば一目で解る筈よ?」


「あー。もう無理だと思うよ? ダンタリアン様にちょちょいと頭の中いじって貰ったから、私がセシリアだと信じてるよ? もう会う事も無いでしょうけど、それでは姉様ご機嫌麗しゅう」


 ダンタリアンが私に対して何かの本を翳すと、私の身体は雀へと変化した。


「姉様は、その弱っちい雀の姿で惨めな人生を楽しんでね? 一応戻る方法はあるから精一杯頑張って見たらいいよ。ダンタリアン様を倒す事が出来れば戻れるそうよ? 人が悪魔柱を倒した過去など一度も無いらしいけどね? 勿論雀でも無理だと思うよ」


 小さくなった私は、拘束からは逃れる事が出来たので、鉄格子の窓の隙間から、夜空に飛び立った。

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