初恋

 家の近所に駄菓子屋があった。子供の足でも5分とかからない、同じ町内の小さな店だった。天井近くの高いところに型落ちした古い小さなテレビが置いてあったけれど、ついぞそれが点いているところは見たことはなかった。壁は塗装が剥げかかっていて、店は無愛想な老女の店主一人で、体があまり良くないらしく無人で開け放されていることも多かった。

 壁に貼られた古いポスター。日に焼けて色が褪せたそれには、アイドルらしき褐色の女性が笑顔で写っていた。


 一目惚れだった。高鳴る心臓が体を揺さぶっているような気さえした。脈動が耳元でずっと聞こえていた。混乱して何も考えられなくなり呆然としながらも、頰に熱がこもって行くのを感じていた。きっとあれが、私の初恋だった.

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