片恋おかず

 ネットスーパーはありがたい。予定した時間に在宅しておけば、重いものも、たくさん買える。車も自転車もない一人暮らしで、トイレットペーパーを運ぶのが大変だとか、米が重いとか、考える必要がない。

 配送料がかかると思うだろうが、何と一定金額以上買うと配送料は無料だ。つまり、まとめ買いをすればいいのだ。

 外に出るのも、重いものを運ぶのも嫌いな私は、いよいよ家でごはんを炊く決心をして、迷わずネットスーパーのサイトにアクセスした。一人暮らしだし冷蔵庫も大きくないので、2㎏の米だけど、それでも、歩いて運びたくはない。

 そして、今日夕方。仕事を終えた私の元に、待ちに待った、米とおかず達が届いた、はずであった。お茶漬けを作るために、白だしや白ごま、鮭フレーク、疲れているときのためのインスタント味噌汁、普段使いの味噌汁の具、朝飲むスムージーを作るための冷凍フルーツ、元気があるときに食べるフルーツグラノーラ……。一つ一つ冷蔵庫や冷凍庫、キッチン収納へと置いていくうちに気づく。米がなかったのである。


 なぜだ。私は米を目的にサイトにアクセスしたはずだ。そう思って、納品書や注文確認メールを見るが、そこに、「米」の文字はない。現実は無慈悲だ。

 私の落ち度でしかない。

 お茶漬けも、味噌汁も、米がなくては成立しない。白だしをなめていたって、お茶漬けの味はしない。白ごまをふりかけるお茶漬けも現れない。これでは、スムージーとフルーツグラノーラしか成立しない。

 玲倉庫と冷凍庫で、出番を待っていたカレイも、スーパーで売っていた不思議な餃子も、お茶漬けになるはずだった梅干しも鮭フレークも、米を欲している。このままじゃ、おかず達は実らない片思いを続けることになってしまう。

 いや、スーパーで売っていた不思議な餃子は「レモン入り餃子」と「お好み餃子」なので、ごはんに合うかはわからないが。ちなみに、レモン入り餃子は塩とオリーブオイル、お好み餃子はソースで食べるのだそうだ。

 それから、私は餃子を焼くのも実は初めてだ。それなのに、なぜこんな変化球を買ってきたのか。食べ物で冒険したくなる性分だからである。

 餃子の焼き方も知らないのに、難しそうな餃子を焼こうとしている。説明は日本語でされているし、大丈夫だろうという楽観をしている。


 おかず達を片恋で終わらせないために、私は米を買う。それはいいのだけど、さすがにまたまとめ買いというわけにもいかないので、スーパーまで歩くしかない。

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