終末のための物語ではなく、ふたりの生きた足跡としての物語

 ちょっぴり個性的な先輩の女子と、どちらかといえばツッコミ気質の後輩男子が、ふたりっきりの部活でだべりながら過ごす青春のお話。
 からの、ある日唐突に訪れる「終わり」の物語。
 終末もののSFであり、真正面から青春と恋愛を描いたお話です。いやもう、ちょっと圧倒されて何も言葉が出ない……とにかく最後の最後、クライマックスの盛り上がりがすごすぎて。普通に泣きました。あれは反則……。
 とはいえ、実のところ反則と言えるような手段はなにひとつなく、どこまでもまっすぐ描かれた作品です。細かい表現や構成に気を使いはしても、物語そのものはものすごく素直。搦め手や飛び道具に頼らないからこそ出せる破壊力なんですけど、これ相当な力がないとできない芸当だと思います。こちらからすれば、「コースもタイミングも全部わかってるのに打てない球」みたいな。だからこその威力。
 終盤、世界が不穏になってからの、一旦先輩と離れている間の描写が好き。単純に落差が効いた、というのもあるのですけど、苦しい・厳しい物事を描く際の手触りに垣間見える、何か〝物語に対して嘘のない姿勢〟のようなものが最高に沁みます。
 きっと都合のいい奇跡は起こらなくて、だからこそ、彼と彼女が成そうとしている何かが尊く思える。魂の震えるようなその冒険を、文字を通して共有できる。結びの潔さも含めて、とてもとても綺麗な物語でした。ほんとよかった……!