第10話

「ここらでお開きにすっか...!」


リョーヤはそう言ってくれたのに。

妹のリョーコちゃんは、


「この先もやる...!お兄ちゃんは部屋から出て行って...!」


などと宣っていた。


俺は。


俺的に。


なんの準備もなくここまで来てしまったので、

慌てた。


「もういいよ...!次回にしよ...?」


「ええー!!」


「おい、リョーヤ、妹ちゃんを止めてくれ...!」


「ああ...!そうだな。

もうじき、母親がパートから帰ってくるし...!」


有難いことに。


「ただいまー!ねーぇ、リョーヤ、

誰か来てるの??」


などと、階下から聞こえて。


「あ、母さんだ...!よかった」


と安堵のため息を漏らすリョーヤに

俺も安心してベッドから降りた。


「あーあ。おかーさん、帰って来ちゃったか...

折角、勝負下着、身につけているのに。

真っ赤なレース遣いの紐パン穿いているのに...



とリョーコちゃんは残念がってたけど。


やめろ。


想像しただけで、煩悩に支配されちまうから。


てかな。


俺、こんなことになるとは思ってなかったから、今日はカッコいいトランクス履いてない。


もう何度となく洗い古されたやつだからな。


恥ずかしいよ...先に進まなくて、ほんと良かったんだよ。


「じゃあな、リョーヤ!

また、学校で!それからリョーコちゃん、

ありがとね!」


「あーあ!もう帰っちゃうのか...」


「おじゃましました!」

俺は逃げるようにおばさんに挨拶してリョーヤ宅を後にしたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る